殿におはして泣き寝 若紫09章09

2021-05-06

原文 読み 意味

殿におはして 泣き寝に臥し暮らしたまひつ 御文なども 例の 御覧じ入れぬよしのみあれば 常のことながらも つらういみじう思しほれて 内裏へも参らで 二 三日籠もりおはすれば また いかなるにか と 御心動かせたまふべかめるも 恐ろしうのみおぼえたまふ

05144/難易度:☆☆☆

との/に/おはし/て なき/ね/に/ふし/くらし/たまひ/つ おほむ-ふみ/など/も れい/の ごらんじ/いれ/ぬ/よし/のみ/あれ/ば つね/の/こと/ながら/も つらう/いみじう/おぼし/ほれ/て うち/へ/も/まゐら/で に さむにち/こもり/おはすれ/ば また いか/なる/に/か/と みこころ/うごか/せ/たまふ/べか/める/も おそろしう/のみ/おぼエ/たまふ

二条院にお帰りになって、泣きながら一日寝てお暮らしになった。お手紙なども、いつも通り、ご覧にならないとの返事ばかりのので、いつものなさり方ながらも、つらくたいそう思いつめ放心なさって、宮中へも参内せず、二三日籠っていらっしゃると、また帝より、どうしたわけなのかと、ご心労なさるであろうと想像するにつけても、恐ろしいことだとばかりお考えになる。

殿におはして 泣き寝に臥し暮らしたまひつ 御文なども 例の 御覧じ入れぬよしのみあれば 常のことながらも つらういみじう思しほれて 内裏へも参らで 二 三日籠もりおはすれば また いかなるにか と 御心動かせたまふべかめるも 恐ろしうのみおぼえたまふ

大構造と係り受け

古語探訪

殿 05144

光の自邸である二条院。妻の実家である左大臣邸は「大殿」と呼ばれ区別される。

ご覧じ入れぬ 05144

「入れぬ」の主体は命婦などの女房ではない。女房であれば「ご覧じ入れ申さぬ」など謙譲語が入る。なお、「例の」とあるので、これ以前から光の手紙を藤壺が読もうとしないことが習慣化されていることがわかる。

思しほれ 05144

「思す」と「ほれ(放心する)」の結合語。

いかなるにか 05144

光の病状再発を心配する帝からの言葉。

御心動かせたまふべかめる 05144

きっとご心配なされるだろうという想像。実際に「いかなるにか」との言葉を帝からいただいたのではない。

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