暑きほどはいとど起 若紫09章11
原文 読み 意味
暑きほどは いとど起きも上がりたまはず 三月になりたまへば いとしるきほどにて 人びと見たてまつりとがむるに あさましき御宿世のほど 心憂し
05146/難易度:☆☆☆
あつき/ほど/は いとど/おき/も/あがり/たまは/ず みつき/に/なり/たまへ/ば いと/しるき/ほど/にて ひとびと/み/たてまつり/とがむる/に あさましき/おほむ-すくせ/の/ほど こころうし
暑い間はますます起き上がることもおできにならない。妊娠三ヶ月におなりになると、まったくその兆候がはっきりわかる頃であるので、女房たちはお体の変化をお見受けして不審に思うにつけ、思いも寄らなかった前世からの御宿命のあり方に、宮はつくづく身のつらさをお感じになる。
暑きほどは いとど起きも上がりたまはず 三月になりたまへば いとしるきほどにて 人びと見たてまつりとがむるに あさましき御宿世のほど 心憂し
大構造と係り受け
古語探訪
三月 05146
妊娠三ヶ月。光との性交渉が四月であるから、今は六月で晩夏。「しるきほど」は妊娠の兆候がはっきり現れること。すなわち、急にお腹が大きくなること。
とがむる 05146
あれこれ口にして、どうしたのだろうと不審に思うこと。
あさましき 05146
予想外の事件に対する気持ち。従って、後の「御宿世」は具体的には光の子を懐妊したことを表す。光との逢瀬は既存の事実であるから、何が予想外であるかとなると、光との性交渉の結果、光の子を宿してしまった、それが前世からの宿命だというのだ。