岩隠れの苔の上に並 若紫06章14
原文 読み 意味
岩隠れの苔の上に並みゐて 土器参る 落ち来る水のさまなど ゆゑある滝のもとなり
050100/難易度:☆☆☆
いはがくれ/の/こけ/の/うへ/に/なみ/ゐ/て かはらけ/まゐる おち/くる/みづ/の/さま/など ゆゑ/ある/たき/の/もと/なり
岩陰の苔の上に並んですわり、お酒を召しあがる。落ちてくる水の様子など、もっとも雅趣に富んだ、滝のたもとである。
岩隠れの苔の上に並みゐて 土器参る 落ち来る水のさまなど ゆゑある滝のもとなり
大構造と係り受け
古語探訪
土器参る 05100
お酒をお召しになること。飲むの尊敬語。
ゆゑある滝のもとなり 05100
なかなか解釈ができないところだ。「ゆゑ」は一流人物の教養・趣味性・生れなどをあらわす。そうであれば、滝にゆゑがあるとは考えられない。人造の滝で、その結構に造り手の教養がしのばれるから、ゆゑありなら理解できなくもないが、聖や僧都が滝を作るとも思えない。そこで、この個所から人為的なもの読み取るとすれば、光たちがどこに座ってもいいのに、なかでも滝のもとを選んですわった、その場所取りの審美眼が、ゆゑありなのであろうと考えておく。「ゆゑある」は「滝」にかかるのではなく、「もと」にかかると読むのである。