岩隠れの苔の上に並 若紫06章14

2021-05-04

原文 読み 意味

岩隠れの苔の上に並みゐて 土器参る 落ち来る水のさまなど ゆゑある滝のもとなり

050100/難易度:☆☆☆

いはがくれ/の/こけ/の/うへ/に/なみ/ゐ/て かはらけ/まゐる おち/くる/みづ/の/さま/など ゆゑ/ある/たき/の/もと/なり

岩陰の苔の上に並んですわり、お酒を召しあがる。落ちてくる水の様子など、もっとも雅趣に富んだ、滝のたもとである。

岩隠れの苔の上に並みゐて 土器参る 落ち来る水のさまなど ゆゑある滝のもとなり

大構造と係り受け

古語探訪

土器参る 05100

お酒をお召しになること。飲むの尊敬語。

ゆゑある滝のもとなり 05100

なかなか解釈ができないところだ。「ゆゑ」は一流人物の教養・趣味性・生れなどをあらわす。そうであれば、滝にゆゑがあるとは考えられない。人造の滝で、その結構に造り手の教養がしのばれるから、ゆゑありなら理解できなくもないが、聖や僧都が滝を作るとも思えない。そこで、この個所から人為的なもの読み取るとすれば、光たちがどこに座ってもいいのに、なかでも滝のもとを選んですわった、その場所取りの審美眼が、ゆゑありなのであろうと考えておく。「ゆゑある」は「滝」にかかるのではなく、「もと」にかかると読むのである。

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