げにうちつけなりと 若紫05章05

2021-05-14

原文 読み 意味

げに うちつけなりとおぼめきたまはむも 道理なれど
 初草の若葉の上を見つるより旅寝の袖も露ぞ乾かぬ
と聞こえたまひてむや とのたまふ

05068/難易度:☆☆☆

げに うちつけ/なり/と/おぼめき/たまは/む/も ことわり/なれ/ど
 はつくさ/の/わかば/の/うへ/を/み/つる/より/たびね/の/そで/も/つゆ/ぞ/かはか/ぬ
と/きこエ/たまひ/て/む/や と/のたまふ

「なるほど、唐突すぎて、おとぼけになるのも、当然ですが、
《初草の若葉のような初々しいお方を見た後は 旅寝しているこの袖も恋しい涙で乾くひまがない》
と、どうぞ申し上げてくださいな」とおっしゃる。

げに うちつけなりとおぼめきたまはむも 道理なれど
 初草の若葉の上を見つるより旅寝の袖も露ぞ乾かぬ
と聞こえたまひてむや とのたまふ

大構造と係り受け

古語探訪

げにうちつけなりとおぼめきたまはむも道理なれど 05068

光としては、紫以外に相手のいようがないと思いこんでるのに、どちらへお連れしたらいいかわからないと言われ、自分を通さないのは、突然すぎるからだなと納得する場面。まじめにこの発言をしているのか、すこし冗談気味に言っているのかは判断しがたい。まじめに言っているとしたら、光は状況把握ができないほど、紫に熱を上げていることになる。その光とわけのわからない女房との間のギャップに、ドラマが生まれ、光はある種の滑稽を身にまとう。読みとしてはこの方が面白いと思うのだが、従来の超人的な光源氏観はすこし褪せる。「おぼめき」が、そらとぼける。知っていながらごまかそうとする。

初草の若葉 05068

光るが透き見をしていたおりに、女房と大人が交換した歌に出てきた言葉。

聞こえたまひてむや 05068

尼君でなく、あくまで紫。取次ぎの対象は尼君でも、恋の対象は紫であるから、この歌を贈りたい、聞かせたいのは紫にである。もっと言えば、できれば尼君に知らせず、ことをすませたいと思っているであろう。紫は光個人にとって大切な女性となるが、社会的位置付けとしては、あくまで正式な妻としては扱われないし、扱う意識も光には芽生えないのである。

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