すこし退きてあやし 若紫05章04
原文 読み 意味
すこし退きて あやし ひが耳にや とたどるを 聞きたまひて 仏の御しるべは 暗きに入りても さらに違ふまじかなるものを とのたまふ御声の いと若うあてなるに うち出でむ声づかひも 恥づかしけれど いかなる方の 御しるべにか おぼつかなく と聞こゆ
05067/難易度:☆☆☆
すこし/しぞき/て あやし ひがみみ/に/や と/たどる/を きき/たまひ/て ほとけ/の/おほむ-しるべ/は くらき/に/いり/て/も さらに/たがふ/まじか/なる/ものを と/のたまふ/おほむ-こゑ/の いと/わかう/あて/なる/に うち-いで/む/こわづかひ/も はづかしけれ/ど いか/なる/かた/の おほむ-しるべ/に/か おぼつかなく と/きこゆ
すこし戻りかけて、「変ね、聞き違いかしら」と考えているのをお聞きになって、「仏のお導きは、暗いところに入っても、すこしも間違うはずがないものなのに」とおっしゃるお声のとても若くて上品であるため、何か口にしようにもどんな口ぶりも相手の立派さにあわないと気後れしながらも、「いかなるところへのお導きでしょうか。見当がつかない」と申し上げる。
すこし退きて あやし ひが耳にや とたどるを 聞きたまひて 仏の御しるべは 暗きに入りても さらに違ふまじかなるものを とのたまふ御声の いと若うあてなるに うち出でむ声づかひも 恥づかしけれど いかなる方の 御しるべにか おぼつかなく と聞こゆ
大構造と係り受け
古語探訪
たどる 05067
どうしたことかと原因をさぐること。
仏の御しるべ 05067
場所柄、女房を仏になぞらえた。
のたまふ御声のいと若うあてなるにうち出でむ声づかひも恥づかしけれど 05067
女房は、相手が光と知って気後れしているのではなく、誰かはわからないが、その声の上品さに気後れして、どんな話し方をしても相手の身分にあわないと物怖じしているのである。