すこしねぶたげなる 若紫05章02
原文 読み 意味
すこしねぶたげなる読経の絶え絶えすごく聞こゆるなど すずろなる人も 所からものあはれなり まして 思しめぐらすこと多くて まどろませたまはず 初夜と言ひしかども 夜もいたう更けにけり
05065/難易度:☆☆☆
すこし/ねぶたげ/なる/どきやう/の/たエだエ/すごく/きこゆる/など すずろ/なる/ひと/も ところから/もの-あはれ/なり まして おぼし/めぐらす/こと/おほく/て まどろま/せ/たまは/ず そや/と/いひ/しか/ども よる/も/いたう/ふけ/に/けり
すこし眠たそうな読経が、途絶えがちに身にしみて聞こえてくるなど、供周りようの縁無き者たちも、場所柄、人の世のあはれを感じる。まして君は、この世のあわれのみならず、思い巡らしになる悩みが多くて、お休みになられない。初夜と言っていたが、夜もたいそうふけていた。
すこしねぶたげなる読経の絶え絶えすごく聞こゆるなど すずろなる人も 所からものあはれなり まして 思しめぐらすこと多くて まどろませたまはず 初夜と言ひしかども 夜もいたう更けにけり
大構造と係り受け
古語探訪
読経 05065
僧都の初夜の読経。
すごく 05065
身にしみる。荘厳なイメージ。
すずろなる人 05065
無関係な人の意味だが、「も」を介して「所がら」と対立するところから、この場所に関係ない人のこと、すなわち、仏道に縁のない人である。そんな人でも場所柄、仏道の心がわかるという流れ。具体的には、供周りの人たち。
ものあはれ 05065
「もの」は運命。人の世がはかないことから来る思いである。「まして」は、供周りの人にもまして光は、仏道に縁のある人であり、もののあはれを強く感じるはずだが、という省略がある。「まして」を「まどろまれたまはず」につなげたのでは、まえの一文「すずろなる人も所がらものあはれなり」が意味をなさなくなる。