げに思ひたまへ寄り 若紫05章13
原文 読み 意味
げに 思ひたまへ寄りがたきついでに かくまでのたまはせ 聞こえさするも いかが とのたまふ
05076/難易度:☆☆☆
げに おもひ/たまへ/より/がたき/ついで/に かく/まで/のたまはせ きこエさする/も いかが と/のたまふ
「仰せのとおり思いも寄りません時期ですので、そうまでおっしゃってくださっても、姫君にお伝え申すのも、どんなものでしょうか」とお答えになる。
げに 思ひたまへ寄りがたきついでに かくまでのたまはせ 聞こえさするも いかが とのたまふ
大構造と係り受け
古語探訪
げに 05076
光の言葉の中の「うちつけ(なる)ついでなれど」を受ける。
かくまで 05076
こうまで熱心に。
聞こえさする 05076
諸注は光に対して返事をすることとするが、現に尼君は光と対しているのだがら、「さす」という使役は入らない。なぜなら、使役は、相手との間に第三者を立てるときに使うものだから。従って、ここで「聞こえさする」相手は紫である。まだ幼い紫にそのような熱い気持ちを伝えるのはいかがなものかとの意味。尼君がだめだと判断するのではなく、光自身に考えさせる形で遠まわしに断っているのである。
ついでながら、ここのドラマの焦点は「ついで」という語。光と尼君が使っている言葉だが、意味が違うのだ。光はこの機会にの意味で使うが、尼君はあえて違う意味に置き換えているのが面白いところだ。尼君の意味は、まだ紫が幼いこの時に意味で使っている。この意味のギャップをつなぐのが「げに」の働きである。「げに」にはこのように無理にふたつをつなぐ時に使われることが多い。