亡くなりはべりしほ 若紫04章08
目次
原文 読み 意味
亡くなりはべりしほどにこそ はべりしか それも 女にてぞ それにつけて物思ひのもよほしになむ 齢の末に思ひたまへ嘆きはべるめる と聞こえたまふ さればよ と思さる
05060/難易度:☆☆☆
なくなり/はべり/し/ほど/に/こそ はべり/しか それ/も をむな/にて/ぞ それ/に/つけ/て/ものおもひ/の/もよほし/に/なむ よはひ/の/すゑ/に/おもひ/たまへ/なげき/はべる/める と/きこエ/たまふ されば/よ と/おぼさ/る
「亡くなりましたちょうどその頃、形見を遺したのです。それも女の子でして。それにつけてもの思いの種が生じ、おかげで齢の尽きる今になって、尼君は思い嘆いておるような次第出でございます」とお答え申し上げる。どおりでと、君は合点される。
亡くなりはべりしほどにこそ はべりしか それも 女にてぞ それにつけて物思ひのもよほしになむ 齢の末に思ひたまへ嘆きはべるめる と聞こえたまふ さればよ と思さる
大構造と係り受け
古語探訪
亡くなりはべりしほどにこそはべりしか 05060
「……こそ形見のはべりしか」で、亡くなった直前に形見が生まれたの意味。
それにつけて 05060
当時の結婚形態は女のもとに男が通う形であり、資金的には、かなりの程度女親が婿の面倒をみることになるが、その両親がいないのである。
嘆きはべるめる 05060
「める」は推量、見ていてそう思われるの意味だから、自分のことでなく、嘆くのは尼君。