いとうれしかるべき 若紫04章10
原文 読み 意味
いとうれしかるべき仰せ言なるを まだむげにいはきなきほどにはべるめれば たはぶれにても 御覧じがたくや そもそも 女人は 人にもてなされて大人にもなりたまふものなれば 詳しくはえとり申さず かの祖母に語らひはべりて聞こえさせむ と すくよかに言ひて ものごはきさましたまへれば 若き御心に恥づかしくて えよくも聞こえたまはず
05062/難易度:☆☆☆
いと/うれしかる/べき/おほせごと/なる/を まだ/むげ/に/いはきなき/ほど/に/はべる/めれ/ば たはぶれ/に/て/も ごらんじ/がたく/や そもそも によにん/は ひと/に/もてなさ/れ/て/おとな/に/も/なり/たまふ/もの/なれ/ば くはしく/は/え/とり/まうさ/ず かの/おば/に/かたらひ/はべり/て/きこエ/させ/む と すこやか/に/いひ/て もの-ごはき/さま/し/たまへ/れ/ば わかき/みこころ/に/はづかしく/て え/よく/も/きこエ/たまは/ず
「とても喜ぶべき仰せごとではありますが、まだどうにも幼い具合でしかありませんでしょうから、ご冗談にもお相手しがたいでしょう。そもそも女というものは、人の世話を受けて一人前にもなられるものだから、拙僧では詳しくははかりかねます、例の叔母に話を入れて、申し上げさせましょう」と、そっけなく言って厳めしい表情をされるので、若いお身の上では気が引けて、うまく気持ちをお伝えになれない。
いとうれしかるべき仰せ言なるを まだむげにいはきなきほどにはべるめれば たはぶれにても 御覧じがたくや そもそも 女人は 人にもてなされて大人にもなりたまふものなれば 詳しくはえとり申さず かの祖母に語らひはべりて聞こえさせむ と すくよかに言ひて ものごはきさましたまへれば 若き御心に恥づかしくて えよくも聞こえたまはず
大構造と係り受け
古語探訪
いはきなきほどにはべるめれば 05062
年齢について言うのではない。年齢が理由で幼いというのであれば、「めれ」は不要。見た感じがまだ幼い。もっとつっこんで言うと、「ご覧じがたく」にかかることを考えれば、セックスに耐えない、すなわち肉体的にまだ未発達にみえるとの意味である。一言にしてこれを言えば、初潮を迎えていないので、男を迎えられないということ。「ほど」ではなく「ほと」ではないかとさえ思える。冗談はさておき、「がたくや」の「や」も連用形につくので「あらむ」の省略。難しいだろうの意味。「そもそも女人は」で女性一般論を説きはじめるが、「大人にもなりたまふ」と敬語があることから、具体的に光との関係の中で述べていることが知られる。
とり申さず 05062
「とり」は、受け取るの「取る」、取り計らうの「取る」である。
すくよかに 05062
事務的に感情なく。特に「くはしくはえとり申さず」のあたりに冷たさを感じる。
ものごはきさま 05062
僧侶としての顔。仏頂面。