そらだきものいと心 若紫03章08
目次
原文 読み 意味
そらだきもの いと心にくく薫り出で 名香の香など匂ひみちたるに 君の御追風いとことなれば 内の人びとも心づかひすべかめり
05052/難易度:☆☆☆
そらだきもの いと/こころ/にくく/かをり/いで みやうがう/の/か/など/にほひ/みち/たる/に きみ/の/おほむ-おひかぜ/いと/こと/なれ/ば うち/の/ひとびと/も/こころづかひ/す/べか/めり
ほのかな香りが奥ゆかしくどこからともなくかおり来て、仏に奉るお香なども部屋に満ち、さらに追い風となる君のお召し物の香りは特別し立てなので、坊内の人々もきっと心遣いをするであろう。
そらだきもの いと心にくく薫り出で 名香の香など匂ひみちたるに 君の御追風いとことなれば 内の人びとも心づかひすべかめり
大構造と係り受け
古語探訪
名香 05052
仏へ奉るお香。
御追風 05052
光の衣服の移り香を、追い風(香りを運ぶ風)に見立てたもの。
いとことなれば 05052
空蝉が香りをかいだだけで光だとわかったように、光の移り香は特殊な香りがするのである。
内の人びと 05052
屋敷内にいる人のこと。源氏物語では四例あるが、とくに誰かれなく邸内にいる人々全般を意味すると思われる。すなわち、貴人である光の来訪に坊内が騒然としている様子であろう。