かく籠もれるほどの 若紫03章05
原文 読み 意味
かく籠もれるほどの御物語など聞こえたまひて 同じ柴の庵なれど すこし涼しき水の流れも御覧ぜさせむ と せちに聞こえたまへば かの まだ見ぬ人びとにことことしう言ひ聞かせつるを つつましう思せど あはれなりつるありさまもいぶかしくて おはしぬ
05049/難易度:☆☆☆
かく/こもれ/る/ほど/の/おほむ-ものがたり/など/きこエ/たまひ/て おなじ/しば/の/いほり/なれ/ど すこし/すずしき/みづ/の/ながれ/も/ごらんぜ/させ/む/と せち/に/きこエ/たまへ/ば かの まだ/み/ぬ/ひとびと/に/ことことしう/いひ/きかせ/つる/を つつましう/おぼせ/ど あはれ/なり/つる/ありさま/も/いぶかしく/て おはし/ぬ
このように山籠りをしている間のお話なんかを申し上げになって、「よそと変らぬ粗末な庵だけれど、すこし涼しい遣水でもご覧に入れましょう」 と、切にお誘いなさるので、あのように、まだお会いせぬ人たちに自分のことを大袈裟に言ってきかせていたことが、気恥ずかしくお思いになったが、恋しくおもわれた様子を是非にも知りたくて、僧都の坊にお出かけになった。
かく籠もれるほどの御物語など聞こえたまひて 同じ柴の庵なれど すこし涼しき水の流れも御覧ぜさせむ と せちに聞こえたまへば かの まだ見ぬ人びとにことことしう言ひ聞かせつるを つつましう思せど あはれなりつるありさまもいぶかしくて おはしぬ
大構造と係り受け
古語探訪
同じ柴の庵 05049
よその庵と違いはないが。光を自分の庵へと誘う言葉。
水の流れ 05049
遣水。
かの 05049
「人々」にかける読みも可能だが、あのようにの意味で「言ひ聞かせつる」にかけた。
まだ見ぬ人びと 05049
尼君たち。
ことことしう 05049
僧都が尼君に言った発言「この世にののしりたまふ光る源氏……齢のぶる人の御ありさまなり」をさす。ものものしい、おおげさなの意味。
つつましう 05049
決まり悪く。
あはれなりつるありさま 05049
紫。
いぶかしく 05049
強く知りたく思う気持ち。
おはしぬ 05049
僧都の坊に出かける。