さかしら心あり何く 若紫16章15

2021-05-10

原文 読み 意味

さかしら心あり 何くれとむつかしき筋になりぬれば わが心地もすこし違ふふしも出で来やと 心おかれ 人も恨みがちに 思ひのほかのこと おのづから出で来るを いとをかしきもてあそびなり 女などはた かばかりになれば 心やすくうちふるまひ 隔てなきさまに臥し起きなどは えしもすまじきを これは いとさまかはりたるかしづきぐさなりと 思ほいためり

05271/難易度:☆☆☆

さかしらごころ/あり なにくれ/と/むつかしき/すぢ/に/なり/ぬれ/ば わが/ここち/も/すこし/たがふ/ふし/も/いでく/や/と こころおか/れ ひと/も/うらみがち/に おもひ/の/ほか/の/こと おのづから/いで/くる/を いと/をかしき/もて-あそび/なり むすめ/など/はた かばかり/に/なれ/ば こころやすく/うち-ふるまひ へだて/なき/さま/に/ふし/おき/など/は え/しも/す/まじき/を これ/は いと/さま/かはり/たる/かしづきぐさ/なり/と おもほい/た/めり

女が変に知恵があって、何かとややこしい関係になってしまうと、こちらの気持ちとしても、すこし違う点も相手の側に出て来るのではと遠慮がおかれ、女の方もうらみがちになり、当初は予想もしなかった事態が自然と出て来るものだが、そういうことがない点、こちらはとても興味の尽きない遊び相手である。自分の娘などでも、またこのくらいの年齢になると、気安く振る舞い、うち解けて寝起きをともにするなどは、とてもできない相談であるが、こちらは誠に風変わりな愛情の対象であると、お考えになったようである。

さかしら心あり 何くれとむつかしき筋になりぬれば わが心地もすこし違ふふしも出で来やと 心おかれ 人も恨みがちに 思ひのほかのこと おのづから出で来るを いとをかしきもてあそびなり 女などはた かばかりになれば 心やすくうちふるまひ 隔てなきさまに臥し起きなどは えしもすまじきを これは いとさまかはりたるかしづきぐさなりと 思ほいためり

大構造と係り受け

古語探訪

さかしら心 05271

「女は心やはらかなるなむよき」と光が紫に教えたことの反意的な語。浅知恵。男との関係をうまく取り繕うという浅い考え。ただし、これは大人の女性であれば誰もが持ち合わせているものであり、ここでは紫の美質をほめるために持ち出されているのである。

あり 05271

終止形でなく連用形。連用中止法として意味をここで切るか、「ぬれば」にかかる連用修飾と考えるかは微妙である。すなわち、女がずるい場合と、やっかいな関係になった場合を別にとるか、女がずるくてやっかいか関係になった場合とひとつにとるかであるが、すなおに考えて後者がいいのでは。すなわち、「さかしら心」のために「むつかしき筋」になったと読むのである。

むつかしき筋 05271

性交渉をすませたことのみを示すと考えるより、そうした過程を経て、さらに恋愛関係がもつれ素直な関係でなくなったことをいうのであろう。ようするに、女が変に賢くて、恋愛関係がもつれてしまった場合は、こちらの気持ちも、相手がむかしと違う面があるのではと気持ちが引くし、そうなると相手は恨みごとばかり言うようになるということ。

思ひのほかのこと 05271

別に別れることに限らない。夢中で恋愛していた時には夢にも思わなかった現実のいろいろないやなこと。

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