ものよりおはすれば 若紫16章14
目次
原文 読み 意味
ものよりおはすれば まづ出でむかひて あはれにうち語らひ 御懐に入りゐて いささか疎く恥づかしとも思ひたらず さるかたに いみじうらうたきわざなりけり
05270/難易度:☆☆☆
もの/より/おはすれ/ば まづ/いで/むかひ/て あはれ/に/うち-かたらひ おほむ-ふところ/に/いり/ゐ/て いささか/うとく/はづかし/と/も/おもひ/たら/ず さる/かた/に いみじう/らうたき/わざ/なり/けり
出先よりおかえりになると、まず出迎えて、心をこめて話かけ、御ふところの中に入ってすわり、いささかなりともも気持ちが離れたり気後れを感じたりなさらない。そうした面では、たいそうかわいらしい接し方であった。
ものよりおはすれば まづ出でむかひて あはれにうち語らひ 御懐に入りゐて いささか疎く恥づかしとも思ひたらず さるかたに いみじうらうたきわざなりけり
大構造と係り受け
古語探訪
ものより 05270
外出先。何かしっかりした用事があって外出したことが「もの」という表現で表されているのだと思う。
御懐に入りゐて 05270
光が紫と一夜を明かすことになるその直前にも「この膝の上に大殿籠れよ」との光の言葉を受け、「何心もなくゐたまへる」とあった(もっとも、紫のいる場所を膝としない説もある)。
疎く 05270
心の距離がある状態。
さるかたに 05270
そういう方面ではの意味。これは、性交渉をふくむ大人の女性としてのふるまいと対比する意図がある。