東の対に渡りたまへ 若紫15章17
原文 読み 意味
東の対に渡りたまへるに 立ち出でて 庭の木立 池の方など覗きたまへば 霜枯れの前栽 絵に描けるやうにおもしろくて 見も知らぬ四位 五位こきまぜに 隙なう出で入りつつ げに をかしき所かな と思す
05255/難易度:☆☆☆
ひむがしのたい/に/わたり/たまへ/る/に たち/いで/て には/の/こだち いけ/の/かた/など/のぞき/たまへ/ば しもがれ/の/せんさい ゑ/に/かけ/る/やう/に/おもしろく/て み/も/しら/ぬ しゐ ごゐ/こき-まぜ/に ひま/なう/いで/いり/つつ げに をかしき/ところ/かな と/おぼす
君が東の対に行かれた間に、御座から廂の間に出て、庭の木立や池の方面を御簾の間から覗いてごらんになると、霜枯れした植込みが絵に描いたように美しくて、見たこともない四位や五位の男たちが入り交じり、途切れることなく出たり入ったりする様子は、なるほどすばらしいところだなとお思いになる。
東の対に渡りたまへるに 立ち出でて 庭の木立 池の方など覗きたまへば 霜枯れの前栽 絵に描けるやうにおもしろくて 見も知らぬ四位 五位こきまぜに 隙なう出で入りつつ げに をかしき所かな と思す
大構造と係り受け
古語探訪
東の対に渡りたまへる 05255
主体は光。光がいない間に紫は、二条院の様子を窺う。「に」は理由と考えてもよいが、時の表現ととった。
立ち出でて 05255
どこからどこにと明記はされていないが、その前にいた場所は、御座であり、出た先は、あとに「のぞきたまへば」と、御簾か格子の隙から覗いたのだから、廂の間に出たと考えられる。
四位五位 05255
位で、四位は黒、五位は緋色の服を着る。
げにをかしき所かな 05255
「げに」は以前得た情報通りということ。以前光は、「いざたまへよ、をかしき絵など多く、雛遊びなどするところに」と二条院へ誘ったことがある。その言葉通りに「をかしき」ところなのである。