日高う寝起きたまひ 若紫15章13
原文 読み 意味
日高う寝起きたまひて 人なくて 悪しかめるを さるべき人びと 夕づけてこそは迎へさせたまはめ
とのたまひて 対に童女召しにつかはす 小さき限り ことさらに参れ とありければ いとをかしげにて 四人参りたり
05251/難易度:☆☆☆
ひ/たかう/ねおき/たまひ/て ひと/なく/て あしか/める/を さるべき/ひとびと ゆふづけ/て/こそ/は/むかへ/させ/たまは/め と/のたまひ/て たい/に/わらはべ/めし/に/つかはす ちひさき/かぎり ことさら/に/まゐれ と/あり/けれ/ば いと/をかしげ/にて よたり/まゐり/たり
日が高くなるまで寝ておられてお起きになり、「人がいなくて困ろうから、前々からの適当な女房たちを、夕方になってお迎えなさるがよかろう」とおっしゃって、東の対へは女童を呼びにやる。「小さい者だけ、特に仕立てて参れ」との仰せであったため、特別きれいななりをして四人の女童が参上して来た。
日高う寝起きたまひて 人なくて 悪しかめるを さるべき人びと 夕づけてこそは迎へさせたまはめ
とのたまひて 対に童女召しにつかはす 小さき限り ことさらに参れ とありければ いとをかしげにて 四人参りたり
大構造と係り受け
古語探訪
日高う寝起きたまひて05251
日が高くなるまで寝ていて起きたこと。それまで寝ていたのである。手水を使ったり、朝がゆをすませたのではない。
人なくて 05251
「人」は、紫の側仕えをする女房。
さるべき人びと 05251
紫の世話をするのに適当な女房たち。「迎へ」とあるので、これは故按察大納言邸から呼び寄せるのである。「夕づけてこそ」とあるのは、紫をここにかくまっていることが、漏れるのを恐れてのことであろう。
小さき限りことさらに参れとありければいとをかしげにて四人参りたり 05251
「小さいかぎりことさらに参れ」を、諸注は、小さい者だけ特別に参れ、と訳すが、この特別にはどういう意味なのだろう。特別に小さい者だけを許すから、こっちに来いという意味だろうか。原文には、そういう仰せがあったので、「いとをかしげにて四人参りたり」と続いている。命令と命令の結果がはっきり示されているのだから、ここに注意すれば、「ことさらに」という命令は、「いとをかしげにて」という形で実行されていることがわかる。ここの「ことさらに」は「ことさらにして」の意味であり、特に着飾って参上しろという命令であったことがわかるのだ。「ことさらに」を辞書通り、特別にと訳すことは容易である。しかし、それは具体的にどんな意味であるのかをその場面で考えてみることをしなければ、自動翻訳機で訳を作っているのと変わらないことになる。注意したい。