心あわたたしくて今 若紫14章15
原文 読み 意味
心あわたたしくて 今日は いと便なくなむはべるべき 宮の渡らせたまはむには いかさまにか聞こえやらむ おのづから ほど経て さるべきにおはしまさば ともかうもはべりなむを いと思ひやりなきほどのことにはべれば さぶらふ人びと苦しうはべるべし と聞こゆれば よし 後にも人は参りなむ とて 御車寄せさせたまへば あさましう いかさまにと思ひあへり
05236/難易度:☆☆☆
こころあわたたしく/て けふ/は いと/びんなく/なむ/はべる/べき みや/の/わたら/せ/たまは/む/に/は いかさまにか/きこエ/やら/む おのづから ほど/へ/て さるべき/に/おはしまさ/ば ともかうも/はべり/な/む/を いと/おもひやり/なき/ほど/の/こと/に/はべれ/ば さぶらふ/ひとびと/くるしう/はべる/べし と/きこゆれ/ば よし のち/に/も/ひと/は/まゐり/な/む とて みくるま/よせ/させ/たまへ/ば あさましう いかさま/に/と/おもひ/あへ/り
気がもまれて、「今日は何とも都合が悪くございましょう。父宮がお出でなりましたら、どのように申し上げたらよいやら。無理せず成り行きで、時期が来て、そうなる運命でいらっしゃれば、どのようにでもきっとなりましょうが、まったく気持ちの準備ができないうちの移転ですから、仕える者たちも耐え難くありましょう」と申し上げると、「よろしい、あとにでも誰か参るがよい」と、お車を廂の間へ寄せさせになるので、どうなさるのかと、女房たちは心配しあった。
心あわたたしくて 今日は いと便なくなむはべるべき 宮の渡らせたまはむには いかさまにか聞こえやらむ おのづから ほど経て さるべきにおはしまさば ともかうもはべりなむを いと思ひやりなきほどのことにはべれば さぶらふ人びと苦しうはべるべし と聞こゆれば よし 後にも人は参りなむ とて 御車寄せさせたまへば あさましう いかさまにと思ひあへり
大構造と係り受け
古語探訪
さるべきにおはしまさば 05236
「さ」は、光が言うように光のもとにゆくことを受け、そうなる運命でいらっしゃうるならということ。