年ごろもあつしくさ 若紫13章04
原文 読み 意味
年ごろも あつしくさだ過ぎたまへる人に添ひたまへるよ かしこにわたりて見ならしたまへなど ものせしを あやしう疎みたまひて 人も心置くめりしを かかる折にしもものしたまはむも 心苦しう などのたまへば
05211/難易度:☆☆☆
としごろ/も あつしく/さだ/すぎ/たまへ/る/ひと/に/そひ/たまへ/る/よ かしこ/に/わたり/て/み/ならし/たまへ/など ものせ/し/を あやしう/うとみ/たまひ/て ひと/も/こころおく/めり/し/を かかる/をり/に/しも/ものし/たまは/む/も こころぐるしう など/のたまへ/ば
「長い間、お体が悪く年のゆかれた人とご一緒になったものだ。あちらに移って馴れ過ごしなさいなどとお移ししたが、やけにお避けになって、向こうでも気兼ねしたみたいであったのに、こんな折りも折りお移しするのも、気がかりだが」などとおっしゃったところ、
年ごろも あつしくさだ過ぎたまへる人に添ひたまへるよ かしこにわたりて見ならしたまへなど ものせしを あやしう疎みたまひて 人も心置くめりしを かかる折にしもものしたまはむも 心苦しう などのたまへば
大構造と係り受け
古語探訪
あつしく 05211
病気が重いこと。
さだ 05211
盛りの時期。
見ならし 05211
そこの生活に馴れること。
ものせし 05211
言うの代用とするが、すぐあとに「かかるをりにしもものしたまはむ」と同じ語が使われ、ここでは明らかに、移すことである。
疎み 05211
はっきりした対象があって、それを嫌がることである。相手を前にして嫌ったのである。だから相手の方も「心おくめりし」、すなわち、気兼ねした様子であったのである。たんに、話だけの段階で、人を嫌がり、相手が気兼ねしたというのではない。なお「人」は敬語がないことから女房とも解釈できると思う。
かかる折に 05211
尼君が亡くなって間なしに。