宮も御迎へになど聞 若紫12章09
原文 読み 意味
宮も御迎へになど聞こえのたまふめれど この御四十九日過ぐしてや など思うたまふる と聞こゆれば
頼もしき筋ながらも よそよそにてならひたまへるは 同じうこそ疎うおぼえたまはめ 今より見たてまつれど 浅からぬ心ざしはまさりぬべくなむ とて かい撫でつつ かへりみがちにて出でたまひぬ
05200/難易度:☆☆☆
みや/も/おほむ-むかへ/に/など/きこエ/のたまふ/めれ/ど この/おほむ-なななぬか/すぐし/て/や など/おもう/たまふる と/きこゆれ/ば たのもしき/すぢ/ながら/も よそよそ/にて/ならひ/たまへ/る/は おなじう/こそ/うとう/おぼエ/たまは/め いま/より/み/たてまつれ/ど あさから/ぬ/こころざし/は/まさり/ぬ/べく/なむ とて かい-なで/つつ かへりみがち/にて/いで/たまひ/ぬ
「父宮もお迎えになどと申し上げになっているようですが、この四十九日を勤めてから考えようと思っております」と申し上げると、「頼りになる筋柄ではあるけれども、別々に過ごして来られたのですから、その分ではわたし同様、距離をお感じになるだろう、しかし、わたしは今からお世話申し上げるが、前世からの浅からぬ心ざしは、かならずや父宮にまさっているはずだ」と、姫君の髪をかき撫でかき撫で、何度も振り返りながら帰ってゆかれた。
宮も御迎へになど聞こえのたまふめれど この御四十九日過ぐしてや など思うたまふる と聞こゆれば
頼もしき筋ながらも よそよそにてならひたまへるは 同じうこそ疎うおぼえたまはめ 今より見たてまつれど 浅からぬ心ざしはまさりぬべくなむ とて かい撫でつつ かへりみがちにて出でたまひぬ
大構造と係り受け
古語探訪
宮 05200
紫の父である兵部卿宮。
御四十九日 05200
尼君の四十九日。
頼もしき筋 05200
紫の父。
よそよそにてならひたまへる 05200
紫と父が別々の暮らしに馴れてきたこと。
同じうこそ 05200
他人である自分(光)に対して同様、父に対しても。
疎う 05200
疎んじるという強い意味でなく、心に距離をもつという感じ。光の体験としては、「手をとらへたまへれば、寝なむといふものをとて、強ひてひき入りたまふ」というあたりに、よそよそしさを感じた。
浅からぬ心ざし 05200
「浅からぬ」とは、単に深いという意味でなく、前世から決まっているのだという王朝人の心理構造が背後にある。
まさり 05200
父宮にまさること。