いとあはれに見たて 若紫12章08
原文 読み 意味
いとあはれに見たてまつる御ありさまを 今はまして 片時の間もおぼつかなかるべし 明け暮れ眺めはべる所に渡したてまつらむ かくてのみは いかが もの怖ぢしたまはざりけり とのたまへば
05199/難易度:☆☆☆
いと/あはれ/に/み/たてまつる/おほむ-ありさま/を いま/は/まして かたとき/の/ま/も/おぼつかなかる/べし あけくれ/ながめ/はべる/ところ/に/わたし/たてまつら/む かくて/のみ/は いかが もの-おぢ/し/たまは/ざり/けり と/のたまへ/ば
「とてもいとしく拝見してきたお姿を、こうなった今はまして、片時の間も離れていては心配でならないだろう。朝夕あなたのことを思い続けていた場所にお移しいたしましょう。ここでこうしてばかりいてはどうなろう。わたしを怖がっておいででもなかったし」とおっしゃるので、
いとあはれに見たてまつる御ありさまを 今はまして 片時の間もおぼつかなかるべし 明け暮れ眺めはべる所に渡したてまつらむ かくてのみは いかが もの怖ぢしたまはざりけり とのたまへば
大構造と係り受け
古語探訪
いとあはれに見たてまつる御ありさまを 05199
今拝見しているのではなく、これまでそうしてきたという現在完了。
あはれ 05199
いたいけではなく、愛情をもって。
眺め 05199
もの思いにふけることだが、口に出して言っているのだがから、もちろん、紫のことを思っての意味である。
所 05199
二条院。
かくてのみ 05199
後見するものもないこんな場所で暮らしていては。
もの怖じしたまはざりけり 05199
紫が自分を恐れていなかった、という意味だが、だから、自分が引き取っても心配ないだろうという、女房たちへの弁明。さらに、実際の場面としては、紫とことにおよぼうと裸にまでしても、怖がらなかったということだから、紫に抵抗する意志はなく、ことが成就したか否かはまったく自分の気ひとつであることを確認し、だから、もらいうけることに、紫の反対はないはずだという意味にもなる。