君は上を恋ひきこえ 若紫11章13
原文 読み 意味
君は 上を恋ひきこえたまひて泣き臥したまへるに 御遊びがたきどもの 直衣着たる人のおはする 宮のおはしますなめり と聞こゆれば 起き出でたまひて 少納言よ 直衣着たりつらむは いづら 宮のおはするか とて 寄りおはしたる御声 いとらうたし
05188/難易度:☆☆☆
きみ/は うへ/を/こひ/きこエ/たまひ/て/なき/ふし/たまへ/る/に おほむ-あそびがたき-ども/の なほし/き/たる/ひと/の/おはする みや/の/おはします/な/めり と/きこゆれ/ば おき/いで/たまひ/て せうなごん/よ なほし/き/たり/つ/らむ/は いづら みや/の/おはする/か とて より/おはし/たる/おほむ-こゑ いと/らうたし
姫君は尼君を恋しく思い申し上げになり泣きながら臥せておられたが、お遊び仲間の女童たちが、「直衣を着ている人がお越しです。宮がいらっしゃったのでしょう」と申し上げると、寝所より起き出て来られ、「少納言や、直衣を着てるというお方はどこ。宮がおいでなの」とて近づいて来られるお声は、とても愛らしい。
君は 上を恋ひきこえたまひて泣き臥したまへるに 御遊びがたきどもの 直衣着たる人のおはする 宮のおはしますなめり と聞こゆれば 起き出でたまひて 少納言よ 直衣着たりつらむは いづら 宮のおはするか とて 寄りおはしたる御声 いとらうたし
大構造と係り受け
古語探訪
君 05188
紫。
上 05188
尼君。
臥したまへる 05188
横になった状態で寝入ったわけではない。遊び相手の言葉にすぐ起き出せたのもそのためである。
直衣着たる人 05188
「直衣」は男性貴族の普段着。この邸に出入りする者で直衣を身につけている人は父である兵部卿宮しかいないと、早合点したのである。
宮 05188
父宮。
なめり 05188
断定に推量がついたもの。
たりつらむ 05188
「らむ」は推量。