常に思ひたまへ立ち 若紫10章09
目次
原文 読み 意味
常に思ひたまへ立ちながら かひなきさまにのみもてなさせたまふに つつまれはべりてなむ 悩ませたまふこと 重くとも うけたまはらざりけるおぼつかなさ など聞こえたまふ
05165/難易度:☆☆☆
つね/に/おもひ/たまへ/たち/ながら かひなき/さま/に/のみ/もてなさ/せ/たまふ/に つつま/れ/はべり/て/なむ なやま/せ/たまふ/こと おもく/とも うけたまはら/ざり/ける/おぼつかなさ など/きこエ/たまふ
「いつも見舞いに上がろうと思いながら、誠意を示しても甲斐がない風にのみおもてなしなので、遠慮されてしまいつい。ご容態について、悪いともお聞きしませんでしたが、心配で」など君は申し上げになる。
常に思ひたまへ立ちながら かひなきさまにのみもてなさせたまふに つつまれはべりてなむ 悩ませたまふこと 重くとも うけたまはらざりけるおぼつかなさ など聞こえたまふ
大構造と係り受け
古語探訪
かひなきさまにのみもてなさせたまふ 05165
光が紫を所望しても、尼君が色よい返事をしないこと。
悩ませたまふこと重くともうけたまはらざりけるおぼつかなさ 05165
通常、「うけたまはらざりけるおぼつかなさ」と続けて、重病と伝わってこないことが心許ない、すなわち、重病であればすぐに知らせるべきだとの意味で取られているようだ。しかし、それはおかしいだろう。病気見舞いに来て、病人に向かってそんな挨拶をするはずがない。重病とも聞いておりませんが、容態が気になりますという見舞いの言葉である。もちろん、惟光から病気が重いことは聞いているが、そんなことを当人に告げるものではない。