君は行ひしたまひつ 若紫01章09
目次
原文 読み 意味
君は 行ひしたまひつつ 日たくるままに いかならむと思したるを とかう紛らはさせたまひて 思し入れぬなむ よくはべる と聞こゆれば 後への山に立ち出でて 京の方を見たまふ
05009/難易度:☆☆☆
きみ/は おこなひ/し/たまひ/つつ ひ/たくる/まま/に いか/なら/む/と/おぼし/たる/を とかう/まぎらはさ/せ/たまひ/て おぼし/いれ/ぬ/なむ よく/はべる と/きこゆれ/ば しりへ/の/やま/に/たち/いで/て きやう/の/かた/を/み/たまふ
君は勤行を行いながらも、日が傾くにしたがい、どうなるのだろうとご案じになられるが、聖が「とかく気持ちをお紛らせになって、思い詰めぬのがようございます」と申し上げると、岩屋の裏の山にお立ち出でになり、都の方をごらんになる。
君は 行ひしたまひつつ 日たくるままに いかならむと思したるを とかう紛らはさせたまひて 思し入れぬなむ よくはべる と聞こゆれば 後への山に立ち出でて 京の方を見たまふ
大構造と係り受け
古語探訪
日たくる 05009
日が高くなるのでなく、日が傾くの意味であろうとの説明は前回やった。「たく」には、高くなる意味と老けるの意味があり、太陽の運行にあたっても後者の意味を持ちうると考える方が、前後関係からして自然だろう。
いかならむ 05009
病気についての心配。
とかう紛らはさせたまひて思し入れぬなむよくはべる 05009
従者の言葉とする注があるが、その内容が病気へのアドバイスであることから、聖と考えるべきであろう。