近き所には播磨の明 若紫01章11
原文 読み 意味
近き所には 播磨の明石の浦こそ なほことにはべれ 何の至り深き隈はなけれど ただ 海の面を見わたしたるほどなむ あやしく異所に似ず ゆほびかなる所にはべる
05011/難易度:☆☆☆
ちかき/ところ/に/は はりま/の/あかし/の/うら/こそ なほ/ことに/はべれ なに/の/いたり/ふかき/くま/は/なけれ/ど ただ うみ/の/おもて/を/みわたし/たる/ほど/なむ あやしく/ことどころ/に/に/ず ゆほびか/なる/ところ/に/はべる
「近いところでは、播磨の国の明石の浦こそは、格別の風情があります。これといった趣き深い物陰はありませんが、ただ海の面(おもて)を見渡しているときなど、なぜかよそと異なり、ゆったりとした気持ちになれる場所です。
近き所には 播磨の明石の浦こそ なほことにはべれ 何の至り深き隈はなけれど ただ 海の面を見わたしたるほどなむ あやしく異所に似ず ゆほびかなる所にはべる
大構造と係り受け
古語探訪
明石 05011
ここは地名であるが、のちの明石の君の前振りとなっている。明石は明かしであり、「光る君」「かかやく日の宮」に順じ光に関係する、第一世代として一級人物として扱われることが、その名にほのめかされている。
ゆほびかなる 05011
語意がはっきりしないが、おだやかの意味であろうとされている。都の統制範囲は、西では攝津あたりが限界で、播磨以西は何があるかわからない場所というのが、平安人の世界観。そうした西国の中でも、明石はゆいいつ気持ちの休まる場所だという作者の設定。