御使帰りにけれど小 夕顔15章03
原文 読み 意味
御使 帰りにけれど 小君して 小袿の御返りばかりは聞こえさせたり
蝉の羽もたちかへてける夏衣かへすを見てもねは泣かれけり
04180/難易度:☆☆☆
おほむ-つかひ かへり/に/けれ/ど こぎみ/して こうちき/の/おほむ-かへり/ばかり/は/きこエ/させ/たり
せみ/の/は/も/たち/かへ/て/ける/なつごろも/かへす/を/み/て/も/ね/は/なか/れ/けり
君からのお使いの者は帰ってしまったが、小君を使者に、小袿に対するご返事ばけは申し上げさせた。
《秋となりさっぱりと衣を替えおえた蝉の羽のように 薄い夏ごろもを今さらお返しになるのを見ても 過去を清算なさるのかと声を立てて泣かれるばかりです》
御使 帰りにけれど 小君して 小袿の御返りばかりは聞こえさせたり
蝉の羽もたちかへてける夏衣かへすを見てもねは泣かれけり
大構造と係り受け
古語探訪
御使 04180
光の君からの使者。
蝉の羽 04180
蝉の羽のように薄い衣の意味に、空蝉という名を持つこの世でのはかない存在である自分を蝉に投影している。
たちかへて 04180
「裁ち」(衣を裁断)と「絶ち」(きっぱり思いを絶つ)と「立ち」(光のもとから出立する)の意味がかかるものと思われる。