確かならねどけはひ 夕顔14章08

2021-04-25

原文 読み 意味

確かならねど けはひをさばかりにやと ささめきしかば 惟光をかこちけれど いとかけ離れ 気色なく言ひなして なほ同じごと好き歩きければ いとど夢の心地して もし 受領の子どもの好き好きしきが 頭の君に怖ぢきこえて やがて 率て下りにけるにや とぞ 思ひ寄りける

04174/難易度:☆☆☆

たしか/なら/ね/ど けはひ/を/さばかり/に/や/と ささめき/しか/ば これみつ/を/かこち/けれ/ど いと/かけはなれ けしき/なく/いひ/なし/て なほ/おなじ/ごと/すき/ありき/けれ/ば いとど/ゆめ/の/ここち/し/て もし ずりやう/の/こども/の/すきずきしき/が とう-の-きみ/に/おぢ/きこエ/て やがて ゐ/て/くだり/に/ける/に/や と/ぞ おもひより/ける

確かなことではないが、事件との関わりがありそうなのは惟光以外ないと女房たちはひそかに噂しあっていたので、惟光を責めたけれど、おかど違いもはなはだしいと、さらさら関係のない様子で話にけりをつけ、以前通り女房のもとへ通ってくるので、ますます狐につままれたようにわけがわからず、ひょっとすると、受領の息子などの女たらしが、頭中将様に知られるのを恐れ申し上げて、そのまま任国に連れていったのではないかと、想像を広げてみるのであった。

確かならねど けはひをさばかりにやと ささめきしかば 惟光をかこちけれど いとかけ離れ 気色なく言ひなして なほ同じごと好き歩きければ いとど夢の心地して もし 受領の子どもの好き好きしきが 頭の君に怖ぢきこえて やがて 率て下りにけるにや とぞ 思ひ寄りける

大構造と係り受け

古語探訪

けはひさばかりにやとささめきしかば 04174

女君のもとに通っていた男の雰囲気からして光の君だったであろうと、諸注は解釈するが、この文脈からそんな離れ業の訳文が出てくるものだろうか。「けはひ」は何かから感じられる様子。「さばかりにや」は、そうに違いないということ。ここは、「けはひ」と「気色」が対比されて使われている。惟光があやしい、事件にかかわりがありそうだ、それ以外に考えられないと、女房たちのあいだで噂しあっていた。そこで惟光に白状しろと責めたが、お門違いもほどがある金輪際関係ないときっぱり言いきり、そればかりか、以前のように女房のもとに通い出すので嘘を言っているとも思われず、真相は夢のようにわからなくなったのである。惟光が通ってくるのは、犯人が光かそうでないかではなく、惟光が共犯でないからであるはずだ。

かけ離れ 04174

これも、相手の男が光なんかではないの意味でなく、事件と自分は関係ないの意味である。

気色なく言ひなし 04174

これも、事件の関連は自分にはないと言いきること。

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