かやうのくだくだし 夕顔15章05
原文 読み 意味
かやうのくだくだしきことは あながちに隠ろへ忍びたまひしもいとほしくて みな漏らしとどめたるを など 帝の御子ならむからに 見む人さへ かたほならずものほめがちなる と 作りごとめきてとりなす人 ものしたまひければなむ あまりもの言ひさがなき罪 さりどころなく
04182/難易度:☆☆☆
かやう/の/くだくだしき/こと/は あながち/に/かくろへ/しのび/たまひ/し/も/いとほしく/て みな/もらし/とどめ/たる/を など/みかど/の/みこ/なら/む/から/に み/む/ひと/さへ かたほ/なら/ず/もの/ほめがち/なる/と つくりごと/めき/て/とり/なす/ひと ものし/たまひ/けれ/ば/なむ あまり/ものいひ/さがなき/つみ さりどころ/なく
このようにくだくだしいお話は、君が無理にも隠そうとされ、じっと忍んでこられた恋愛で、そのご様子を思うと申し訳なくて、みなさし控えてきたのであるが、どうして帝の皇子だからといって、恋の相手の女性までが欠点がなくべたぼめにほめてばかりいるのかと、作り事っぽいと決めてかかる人がいらっしゃったから、仕方なく。あまりに口さがなく書きとめたとの非難は逃れようもないことで……。
かやうのくだくだしきことは あながちに隠ろへ忍びたまひしもいとほしくて みな漏らしとどめたるを など 帝の御子ならむからに 見む人さへ かたほならずものほめがちなる と 作りごとめきてとりなす人 ものしたまひければなむ あまりもの言ひさがなき罪 さりどころなく
大構造と係り受け
古語探訪
かやうのくだくだしきこと 04182
作者が明かした空蝉・軒端荻・夕顔との恋愛物語。
あながちに隠ろへ忍びたまひしも 04182
光の作者に対する態度。
いとほしくて 04182
申し訳なく思うこと。
漏らしとどめたる 04182
これまで書くのを控えてきた。ということは、この三帖は後で挿入した、あるいは、後で挿入したという形式を作者は取っている。
見む人 04182
『注釈』の解釈、恋愛の相手の女性。光を見知っている人ならば「見し人」になろう。「見ん人」は、まだ中流の女性たちとの物語りが語られる前に、帝の皇子だからといって、相手の女が、藤壺様みたいな欠点のない人ばかりでは不自然だといったのである。まだ空蝉などの物語が作られる前だから、「見ん人」と未来形で書かれているのだ。
かたほならず 04182
欠点がない。
とりなす 04182
ゆがんだ解釈をあてはめる。
ものしたまひければ 04182
敬語がついていることから、作者式部にとって現実に身分の高い人からの小言であろうと推察される。道長であろう。
あまりもの言ひさがなき罪 04182
同僚の女房たちに対する言い訳だろう。おそらく女性の読み手は、美しい恋愛を求め、男性の読み手は失敗譚を求めたであろうと想像する。