今は限りにこそはも 夕顔10章02

2021-04-23

原文 読み 意味

今は限りにこそはものしたまふめれ 長々と籠もりはべらむも便なきを 明日なむ 日よろしくはべれば とかくの事 いと尊き老僧の あひ知りてはべるに 言ひ語らひつけはべりぬる と聞こゆ

04110/難易度:☆☆☆

いま/は/かぎり/に/こそ/は/ものし/たまふ/めれ ながなが/と/こもり/はべら/む/も/びんなき/を あす/なむ ひ/よろしく/はべれ/ば とかく/の/こと いと/たふとき/らうそう/の あひ/しり/て/はべる/に いひ/かたらひ/つけ/はべり/ぬる と/きこゆ

「もうこれまで、助かることはなかろうかと。いつまでもこのまま見守っておるのは詮ないことで、明日は、日柄もよいことなので、あれこれのことは、とてもお偉いご老僧のよく知っておりますのに、よくよくもう話もつけてありますし」とお答え申し上げる。

今は限りにこそはものしたまふめれ 長々と籠もりはべらむも便なきを 明日なむ 日よろしくはべれば とかくの事 いと尊き老僧の あひ知りてはべるに 言ひ語らひつけはべりぬる と聞こゆ

大構造と係り受け

古語探訪

籠もり 04110

亡骸をすぐに埋葬するのではなく、蘇生しないかしばらく死体の側で見守る習慣があった。

日よろしはべれば 04110

陰陽道の占いにより、日取りとして埋葬をしてよい日であるの意味。すでに高徳の僧に話がつけてある(「言ひ語らひつけはべりぬる」の「ぬる」は完了)のだから、ここは確定条件である。それゆえ、「日よろしはべらば」と仮定条件になっているテキストは、同意できない。「とかくのこと」は葬儀万端。「ぬる」は連体終止になっている点を読み落としたくない。まだ話は続くのであるが、光の問いにより中断されたのである。最後まで見届けたのかという詰問に、「もうお坊様にも話がつけてありますし」と、惟光は口ごもっている様子が想像される。惟光は実務的にことを進め、噂など立たぬ前に処理してしまいたいのである。

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