この世のみならぬ契 夕顔05章07

2021-04-22

原文 読み 意味

この世のみならぬ契りなどまで頼めたまふに うちとくる心ばへなど あやしくやう変はりて 世馴れたる人ともおぼえねば 人の思はむ所も え憚りたまはで 右近を召し出でて 随身を召させたまひて 御車引き入れさせたまふ このある人びとも かかる御心ざしのおろかならぬを見知れば おぼめかしながら 頼みかけきこえたり

04060/難易度:☆☆☆

このよ/のみ/なら/ぬ/ちぎり/など/まで/たのめ/たまふ/に うちとくる/こころばへ/など あやしく/やう/かはり/て よなれ/たる/ひと/と/も/おぼエ/ね/ば ひと/の/おもは/む/ところ/も え/はばかり/たまは/で うこん/を/めし/いで/て ずいじん/を/めさ/せ/たまひ/て みくるま/ひきいれ/させ/たまふ この/ある/ひとびと/も かかる/みこころざし/の/おろか/なら/ぬ/を/み/しれ/ば おぼめかし/ながら たのみ/かけ/きこエ/たり

この世だけでなく来世の契りまで信じさせになると、ひとたびゆるした気持ちの顕し方は奇異に思われるほどうって変ったものとなり、それが君には世馴れた女の媚態とも思われないので、誰がどう思おうが気にされることもなく、右近を召出し、随身を呼ぶように命じられて、お車を縁まで引き入れさせになる。この家の者たちも、こうした君のご愛情がおろそかでないことを見知っているので、相手の素性がよくわからないながら、主人のことをお頼み申し上げる。

この世のみならぬ契りなどまで頼めたまふに うちとくる心ばへなど あやしくやう変はりて 世馴れたる人ともおぼえねば 人の思はむ所も え憚りたまはで 右近を召し出でて 随身を召させたまひて 御車引き入れさせたまふ このある人びとも かかる御心ざしのおろかならぬを見知れば おぼめかしながら 頼みかけきこえたり

大構造と係り受け

古語探訪

うちとくる心ばへなどあやしくやう変はりて 04060

「心ばへ」は内面が外に映じること。「はへ」は映える。それまで、光には夕顔の気持ちがどこにあるのかつかめなかったが、光が二世を誓うことで、夕顔はようやく心をゆるしたのである。頭中将との恋愛で子までもうけながらも、男が通ってこなくなった過去があるので、相手が本当に頼めるのか、夕顔にとっては不安があったのである。まして、相手の素性もわからないのだから、なおさらである。しかし、生来、疑うことができない夕顔は、光の誓いに安心し、信じきってしまうのである。その変りようがあまりに急激で不思議なほどだが、かといって、世馴れた女の手練手管とも思われないので、光はもう思慮分別をなくし、人が何と思おうがかまったことではなく、すぐに思い通りにできる場所へと女をさらってゆくのである。

Posted by 管理者