惟光尋ねきこえて御 夕顔06章12

2021-04-22

原文 読み 意味

惟光 尋ねきこえて 御くだものなど参らす 右近が言はむこと さすがにいとほしければ 近くもえさぶらひ寄らず かくまでたどり歩きたまふ をかしう さもありぬべきありさまにこそは と推し量るにも 我がいとよく思ひ寄りぬべかりしことを 譲りきこえて 心ひろさよ など めざましう思ひをる

04074/難易度:☆☆☆

これみつ たづね/きこエ/て おほむ-くだもの/など/まゐら/す うこん/が/いは/む/こと さすが/に/いとほしけれ/ば ちかく/も/え/さぶらひ/よら/ず かく/まで/たどり/ありき/たまふ をかしう さも/あり/ぬ/べき/ありさま/に/こそ/は と/おしはかる/に/も わが/いと/よく/おもひより/ぬ/べかり/し/こと/を ゆづり/きこエ/て こころ/ひろさ/よ など めざましう/おもひ/をる

惟光は君を尋ねあてて、軽い食事など人を介してさしあげる。右近にどう言われようと、さすがに申し訳ないので、そばへ伺候することもならない。こんなにも浮かされて連れだしになる、どんな女だろう、それだけの価値があってのことだなと推し量るにつけても、こっちが首尾良くいい仲になりえた女をお譲り申して、その度量と言っては、などあきれたことを考えている。

惟光 尋ねきこえて 御くだものなど参らす 右近が言はむこと さすがにいとほしければ 近くもえさぶらひ寄らず かくまでたどり歩きたまふ をかしう さもありぬべきありさまにこそは と推し量るにも 我がいとよく思ひ寄りぬべかりしことを 譲りきこえて 心ひろさよ など めざましう思ひをる

大構造と係り受け

古語探訪

御くだもの 04074

菓子や果物というより、木の実などの軽い食事であろう。

右近が言はむこと 04074

具体的に何か、文脈から決定しづらい。

いとほしけれ 04074

申し訳ないの意味で、惟光が右近に引け目を感じていることがわかる。光を手引きしたことが右近の苦情であるとの注があるが、自分の仕える貴人を世話した惟光に右近への責任を感じるゆわれはないであろう。惟光からすればよいことをしたのである。では、何に責任を感じているのか。惟光はすぐ直後に自分こそ夕顔と言い仲になれたのだといい気な空想している。右近に引け目を感じながら、すぐにこういう想像をできることからして、惟光は女たらしであり、夕顔の女房と通じた相手は当の右近であり、目的が光を通わせることにあったから、その目的が達成するや、すげなく右近の元に通わなくなったのではないかと私は想像する。今出て行くと、光との主従関係がばれてしまい、何よ、あんた。最近ちっとも来ないと思ったら。手引きが狙いで、惚れてたんじゃないのってことになる。ただし、右近のもとに通ったのかどうか、証拠はないので想像に過ぎない。

めざましう 04074

見くびっている相手が思わぬ行動・態度に出るときの驚き。

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