言はむかたなし頼も 夕顔07章13

2021-04-23

原文 読み 意味

言はむかたなし 頼もしく いかにと言ひ触れたまふべき人もなし 法師などをこそは かかる方の頼もしきものには思すべけれど さこそ強がりたまへど 若き御心にて いふかひなくなりぬるを見たまふに やるかたなくて つと抱きて あが君 生き出でたまへ いといみじき目 な見せたまひそ とのたまへど 冷え入りにたれば けはひものうとくなりゆく

04089/難易度:☆☆☆

いはむかたなし たのもしく いかに/と/いひふれ/たまふ/べき/ひと/も/なし ほふし/など/を/こそ/は かかる/かた/の/たのもしき/もの/に/は/おぼす/べけれ/ど さ/こそ/つよがり/たまへ/ど わかき/みこころ/にて いふかひなく/なり/ぬる/を/み/たまふ/に やるかたなく/て つと/いだき/て あがきみ いき/いで/たまへ いと/いみじき/め な/みせ/たまひ/そ と/のたまへ/ど ひエ/いり/に/たれ/ば けはひ/もの-うとく/なり/ゆく

言い様のない状況である。頼もしくも、どうしたよいかと話を持ちかけになれる人もない。法師などこそはこうした方面で頼もしい人だとお思いになれるのだが、あのように強がっておいででも、若い御心では、言うもむなしくなり果てた様をごらんになるにつけ、どうにもならず、ひしと抱きしめ、「あが君、生きかえっておくれ。こんなつらい目を見せてくれるな」とおっしゃるが、体はすでに冷え切ってしまっているので、伝わってくる気配は遠く疎ましくなりまさる。

言はむかたなし 頼もしく いかにと言ひ触れたまふべき人もなし 法師などをこそは かかる方の頼もしきものには思すべけれど さこそ強がりたまへど 若き御心にて いふかひなくなりぬるを見たまふに やるかたなくて つと抱きて あが君 生き出でたまへ いといみじき目 な見せたまひそ とのたまへど 冷え入りにたれば けはひものうとくなりゆく

大構造と係り受け

古語探訪

言はむ方なし 04089

地の文。

言ひ触れ 04089

話題としてもちかける。

思すべけれど 04089

「やる方なくて」にかかる。

さこそ強がり 04089

「まろあればさやうのものにはおどされじ」などの強がりを指す。

いふかひなくなりぬる 04089

死ぬの朧化。

やるかたなくて 04089

他にどうしようもなくて。

ものうくなりゆく 04089

死者としての存在にかわりつつあることを感覚的に描写した表現。なんでもない表現だが、すさまじい描写力である。

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