艶だち気色ばまむ人 夕顔05章03
原文 読み 意味
艶だち気色ばまむ人は 消えも入りぬべき住まひのさまなめりかし されど のどかに つらきも憂きもかたはらいたきことも 思ひ入れたるさまならで 我がもてなしありさまは いとあてはかにこめかしくて またなくらうがはしき隣の用意なさを いかなる事とも聞き知りたるさまならねば なかなか 恥ぢかかやかむよりは 罪許されてぞ見えける
04056/難易度:☆☆☆
えんだち/けしきばま/む/ひと/は きエ/も/いり/ぬ/べき/すまひ/の/さま/な/めり/かし されど のどか/に つらき/も/うき/も/かたはらいたき/こと/も おもひ/いれ/たる/さま/なら/で わが/もてなし/ありさま/は いと/あてはか/に/こめかしく/て またなく/らうがはしき/となり/の/ようい/なさ/を いか/なる/こと/と/も/きき/しり/たる/さま/なら/ね/ば なかなか はぢ/かかやか/む/より/は つみ/ゆるさ/れ/て/ぞ/みエ/ける
気取ったり見栄っぱりな人なら、きっと消え入りそうな住まいの様子なのであろう。それにもかかわらずおっとりとして、たえがたいことも、いやなことも、きまりが悪いことも、気にとめる様子はなくて、その物腰や様子はとても上品であどけなくて、このうえなく騒々しい隣のぶしつけな態度を、どういうことなのか理解しているようにはないので、なまじ恥ずかしがって顔を赤らめるよりは、罪がないように思わるのであった。
艶だち気色ばまむ人は 消えも入りぬべき住まひのさまなめりかし されど のどかに つらきも憂きもかたはらいたきことも 思ひ入れたるさまならで 我がもてなしありさまは いとあてはかにこめかしくて またなくらうがはしき隣の用意なさを いかなる事とも聞き知りたるさまならねば なかなか 恥ぢかかやかむよりは 罪許されてぞ見えける