道いと露けきにいと 夕顔10章19

2021-04-23

原文 読み 意味

道いと露けきに いとどしき朝霧に いづこともなく惑ふ心地したまふ ありしながらうち臥したりつるさま うち交はしたまへりしが 我が御紅の御衣の着られたりつるなど いかなりけむ契りにかと 道すがら思さる

04127/難易度:☆☆☆

みち/いと/つゆけき/に いとどしき/あさぎり/に いづこ/と/も/なく/まどふ/ここち/し/たまふ ありしながら/うち-ふし/たり/つる/さま うち-かはし/たまへ/り/し/が わが/おほむ-くれなゐ/の/おほむ-ぞ/の/き/られ/たり/つる/など いかなり/けむ/ちぎり/に/か/と/みちすがら/おぼさ/る

道中はとても露っぽいうえに、いっそう朝霧が濃くて、どこへというあてもなく行き暮れたお気持ちになられる。生前のままちょっと横になった様子、あの夜一つ衾(ふすま)を分け合いになられていたご自分の紅いお召物が着せられてあったことなど、どうした宿縁があってのことかと、道すがら思い出しになる。

道いと露けきに いとどしき朝霧に いづこともなく惑ふ心地したまふ ありしながらうち臥したりつるさま うち交はしたまへりしが 我が御紅の御衣の着られたりつるなど いかなりけむ契りにかと 道すがら思さる

大構造と係り受け

古語探訪

露けき 04127

夜露にくわえ、涙にくれてと読むのが、古文の常套。

いとどしき 04127

そのうえ。

いづこともなく惑ふ 04127

帰り道がわからなくなることであって、どこかわからないところへさまよい出るのではない。どこに向って行こうとしているのか行き暮れること。

うち交はしたまへりしが我が御紅の御衣の着られたりつるなど 04127

どうもこの個所は平安文法にのっとっていないず、おそらく定家の書き換えがなされているように思われる。「が」について、ないものとして処理するのが一般的である。しかし、書かれているものを無視はできない。残ったものをテキストとするからには、それで説明がつく限りは安易な変更はすべきでないと思う。この「が」は意味的に主格にはなりえず、同格とも取りにくい。院政期以後にできたという接続助詞の「が」と考えるよりないであろう。また「着られ」の「られ」についても、平安期には無生物が受身をとることがないとの規則により、これを自発などにとる考えが一般的だが、自然と着せられているということ自体、自発という考えを逸脱しているだろう。やはり受身に取るのが自然である。初めに述べたように、この箇所は、平安文法に習わない感じが受けるが、青表紙の諸本が同一文である以上、無視したり無理な説明をせずに疑問を残しながらも素直な解釈を当てはめておくのが現時点での最善策だと思われる。「うちかはし」は光の召物をひとつ衾として同衾したことをいう。その同衾した召物が夕顔の亡骸を覆っているのである。

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