そのわたり近きなに 夕顔06章02
原文 読み 意味
そのわたり近きなにがしの院におはしまし着きて 預り召し出づるほど 荒れたる門の忍ぶ草茂りて見上げられたる たとしへなく木暗し 霧も深く 露けきに 簾をさへ上げたまへれば 御袖もいたく濡れにけり
04064/難易度:☆☆☆
その/わたり/ちかき/なにがし-の-ゐん/に/おはしまし/つき/て あづかり/めし/いづる/ほど あれ/たる/かど/の/しのぶぐさ/しげり/て/みあげ/られ/たる たとしへなく/こぐらし きり/も/ふかく つゆけき/に すだれ/を/さへ/あげ/たまへ/れ/ば おほむ-そで/も/いたく/ぬれ/に/けり
その辺りに近い誰それの院にお着きになれて、留守居役をお召し出しになる間、荒れはてた門に忍ぶ草の生い茂る様子がつい目に入るのが、たとえようなく木深く感じる。霧までも深く湿っぽいので、人目を忍ぶどころか簾までもお上げになったところ、お袖もしとどに濡れてしまわれた。
そのわたり近きなにがしの院におはしまし着きて 預り召し出づるほど 荒れたる門の忍ぶ草茂りて見上げられたる たとしへなく木暗し 霧も深く 露けきに 簾をさへ上げたまへれば 御袖もいたく濡れにけり