忍びて調ぜさせたま 夕顔14章04

2021-05-14

原文 読み 意味

忍びて調ぜさせたまへりける装束の袴を取り寄せさせたまひて
 泣く泣くも今日は我が結ふ下紐をいづれの世にかとけて見るべき

04170/難易度:☆☆☆

しのび/て/てうぜ/させ/たまへ/り/ける/さうぞく/の/はかま/を/とりよせ/させ/たまひ/て
 なく/なく/も/けふ/は/わが/ゆふ/したひも/を/いづれ/の/よ/に/か/とけ/て/みる/べき

夕顔の名は秘したまま、供養のための施物に誂えさせになった装束の袴を、お取り寄せになり、
《泣きながら 今日はわたしが結ぶ下紐であるが いつの世にしっぽりと紐を解いて寝られようか》

忍びて調ぜさせたまへりける装束の袴を取り寄せさせたまひて
 泣く泣くも今日は我が結ふ下紐をいづれの世にかとけて見るべき

大構造と係り受け

古語探訪

忍びて調ぜさせたまへりける装束 04170

僧侶としての布施以外に、死者の身につけていたものなどを、供養のために寺へ納める風習があった。ただし、夕顔にはそのために取っておいたものがないので、光が代用品を新調したのである。「忍びて」は、夕顔の正体を作りてに明かさず、また、世間にそういうものを光が新調させていることを知らせずに。

とけて見るべき 04170

下紐を解くの意味と、誰にはばかることなく心ひとつになっての意味をかける。「見る」は、もちろん、性愛を愉しむこと。これも、軒端荻の歌に負けずエロチックであるが、紐を解くという言い回しは、万葉の時代から歌語として成立している点で、平安人にとって生なニュアンスはないのだろうと思う。

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