忍びて調ぜさせたま 夕顔14章04
原文 読み 意味
忍びて調ぜさせたまへりける装束の袴を取り寄せさせたまひて
泣く泣くも今日は我が結ふ下紐をいづれの世にかとけて見るべき
04170/難易度:☆☆☆
しのび/て/てうぜ/させ/たまへ/り/ける/さうぞく/の/はかま/を/とりよせ/させ/たまひ/て
なく/なく/も/けふ/は/わが/ゆふ/したひも/を/いづれ/の/よ/に/か/とけ/て/みる/べき
夕顔の名は秘したまま、供養のための施物に誂えさせになった装束の袴を、お取り寄せになり、
《泣きながら 今日はわたしが結ぶ下紐であるが いつの世にしっぽりと紐を解いて寝られようか》
忍びて調ぜさせたまへりける装束の袴を取り寄せさせたまひて
泣く泣くも今日は我が結ふ下紐をいづれの世にかとけて見るべき
大構造と係り受け
古語探訪
忍びて調ぜさせたまへりける装束 04170
僧侶としての布施以外に、死者の身につけていたものなどを、供養のために寺へ納める風習があった。ただし、夕顔にはそのために取っておいたものがないので、光が代用品を新調したのである。「忍びて」は、夕顔の正体を作りてに明かさず、また、世間にそういうものを光が新調させていることを知らせずに。
とけて見るべき 04170
下紐を解くの意味と、誰にはばかることなく心ひとつになっての意味をかける。「見る」は、もちろん、性愛を愉しむこと。これも、軒端荻の歌に負けずエロチックであるが、紐を解くという言い回しは、万葉の時代から歌語として成立している点で、平安人にとって生なニュアンスはないのだろうと思う。