うちとけで向ひゐた 夕顔13章08
目次
原文 読み 意味
うちとけで向ひゐたる人は え疎み果つまじきさまもしたりしかな 何の心ばせありげもなく さうどき誇りたりしよ と思し出づるに 憎からず なほ こりずまに またもあだ名立ちぬべき 御心のすさびなめり
04166/難易度:☆☆☆
うちとけ/で/むかひ/ゐ/たる/ひと/は え/うとみ/はつ/まじき/さま/も/し/たり/し/かな なに/の/こころばせ/ありげ/も/なく さうどき/ほこり/たり/し/よ と/おぼし/いづる/に にくから/ず なほ/こりずま/に また/も/あだな/たち/ぬ/べき/みこころ/の/すさび/な/めり
姿勢を崩さないで対座していた方は、見捨て難い様子をもしていたな、一方、まわりに何の配慮をする風もなく、得々とはしゃいでいたことだと思い出しになるにつけ憎からず思われ、相変わらず性懲りもなく、またまた浮名も立ちそうな御心の奔放さということか。
うちとけで向ひゐたる人は え疎み果つまじきさまもしたりしかな 何の心ばせありげもなく さうどき誇りたりしよ と思し出づるに 憎からず なほ こりずまに またもあだ名立ちぬべき 御心のすさびなめり
大構造と係り受け
古語探訪
心ばせ 04166
まわりへの配慮。
さうどき誇りたりし 04166
得意げにさわぐ様子。もっとも碁の勝負に軒端荻は負けている。
思し出づるに憎からず 04166
「に」は、~につけてもの「に」。行儀の悪さは平安人の美意識では普通マイナスに働くが、うちとけない空蝉とは違って、ダイレクトな行動にでる軒端荻も、男心をくすぐるのである。ただ、空蝉は後々まで見捨てることのできない相手と考えるのに対して、軒端荻の方は一時的な遊び相手でしかない点が違うのである。
すさび 04166
心の赴くままにことをはこぶこと。
めり 04166
推量というか、断定を避けた言いぶり。