少将のなき折に見す 夕顔13章06
原文 読み 意味
少将のなき折に見すれば 心憂しと思へど かく思し出でたるも さすがにて 御返り 口ときばかりをかことにて取らす
ほのめかす風につけても下荻の半ばは霜にむすぼほれつつ
04164/難易度:☆☆☆
せうしやう/の/なき/をり/に/みすれ/ば こころうし/と/おもへ/ど かく/おぼし/いで/たる/も さすが/にて おほむ-かへり くちとき/ばかり/を/かこと/にて/とら/す
ほのめかす/かぜ/に/つけ/て/も/した/をぎ/の/なかば/は/しも/に/むすぼほれ/つつ
少将がいない時に見せると、あの件では情けない思いでいるが、このように思い出してくださったことも、さすがにうれしくて、早いだけを口実に、君へのご返事を小君に取らせる。
《あの夜のことをほのめかしになる お便りをいただくにつけても 荻の下葉が霜にあたったように 私の下半身は お冷え切ったままで》
少将のなき折に見すれば 心憂しと思へど かく思し出でたるも さすがにて 御返り 口ときばかりをかことにて取らす
ほのめかす風につけても下荻の半ばは霜にむすぼほれつつ
大構造と係り受け
古語探訪
心憂し 04164
光に見捨てられた自分をみじめに思うこと。 軒端荻の歌の解釈について。まず全体の構文であるが、「つけても」を諸注は、便りにつけ思いしおれていますと順接に訳すが、「つけても……つつ」は呼応しあい、便りをもらってもなおしおれたままだと逆接表現である。歌意をとる前に、この歌に対する評「さればみ」をみておく。この語は、諸注のようにシャレたの意味でなく、使われる場面は、男女間のたわむれの場面であり、悪じゃれて、どぎつく、品のない、直截な話題をする意味である。要するに、直接セックスを表す言葉を口にすることだ。したがって、歌意にこの意味をふくむ必要がある。これにあたるのは「下荻のなかば」である。要するに、手紙だけじゃなく、あなたが来てくれないと、男ひでりで下半身は閉じたままだという意味である。