さかしさ皆思ひなせ 夕顔10章05
目次
原文 読み 意味
さかし さ 皆思ひなせど 浮かびたる心のすさびに 人をいたづらになしつるかごと負ひぬべきが いとからきなり 少将の命婦などにも聞かすな 尼君ましてかやうのことなど 諌めらるるを 心恥づかしくなむおぼゆべき と 口かためたまふ
04113/難易度:☆☆☆
さかし さ/みな/おもひ/なせ/ど うかび/たる/こころ/の/すさび/に ひと/を/いたづら/に/なし/つる/かごと/おひ/ぬ/べき/が いと/からき/なり せうしやう-の-みやうぶ/など/に/も/きかす/な あまぎみ/まして/かやう/の/こと/など いさめ/らるる/を こころはづかしく/なむ/おぼゆ/べき/と くちかため/たまふ
「そうだな。その通りみな定めだと思ってはみるが、浮わついた心の気まぐれから人をなきものにしてしまった咎を負わねばならないのが、とてもこたえる。少将の命婦などにも聞かせるな。尼君にはましてこうし筋合いのことでは小言を受けるから、あわせる顔がない気がする」と、そう口止めをなさる。
さかし さ 皆思ひなせど 浮かびたる心のすさびに 人をいたづらになしつるかごと負ひぬべきが いとからきなり 少将の命婦などにも聞かすな 尼君ましてかやうのことなど 諌めらるるを 心恥づかしくなむおぼゆべき と 口かためたまふ
大構造と係り受け
古語探訪
さかし 04113
「さ」は、「さるべきにこそよろづのことはべらめ」という惟光の言葉を受け、その通りだなと光が実感している。次の「さ」も同じ言葉をさす。
皆 04113
万事。
浮かびたる 04113
浮ついた。
いたづらになしつる 04113
人を死なせたこと。
かごと 04113
非難。
諌めらるる 04113
「らるる」は尊敬でなく受身。これまでも光の発言中、尼君には敬語は使われていない。