日高くなれど起き上 夕顔09章03
原文 読み 意味
日高くなれど 起き上がりたまはねば 人びとあやしがりて 御粥などそそのかしきこゆれど 苦しくて いと心細く思さるるに 内裏より御使あり 昨日 え尋ね出でたてまつらざりしより おぼつかながらせたまふ 大殿の君達参りたまへど 頭中将ばかりを 立ちながら こなたに入りたまへ とのたまひて 御簾の内ながらのたまふ
04106/難易度:☆☆☆
ひ/たかく/なれ/ど おきあがり/たまは/ね/ば ひとびと/あやしがり/て おほむ-かゆ/など/そそのかし/きこゆれ/ど くるしく/て いと/こころぼそく/おぼさ/るる/に うち/より/おほむ-つかひ/あり きのふ え/たづねいで/たてまつら/ざり/し/より おぼつかながら/せ/たまふ おほとの/の/きむだち/まゐり/たまへ/ど とう-の-ちうじやう/ばかり/を たち/ながら こなた/に/いり/たまへ と/のたまひ/て みす/の/うち/ながら/のたまふ
日が高くなったけれど、お起きにならないので、周り者たちが不審がって、お粥などおすすめするが、苦しくてとても気を弱くなさっているところへ、内裏より帝のお使いがあって、きのう若君をお探し申し上げられなかったため、帝はご心配なさっているのだ。左大臣のご子息方もおいでになるが、頭中将だけを、「立ったままですが、こちらへお入りください」と廂の間にお通しになり、御簾を隔ててお話される。
日高くなれど 起き上がりたまはねば 人びとあやしがりて 御粥などそそのかしきこゆれど 苦しくて いと心細く思さるるに 内裏より御使あり 昨日 え尋ね出でたてまつらざりしより おぼつかながらせたまふ 大殿の君達参りたまへど 頭中将ばかりを 立ちながら こなたに入りたまへ とのたまひて 御簾の内ながらのたまふ
大構造と係り受け
古語探訪
昨日え尋ね出でたてまつらざりしより 04106
先に「内裏にいかに求めさせたまふらむをいづこに尋ぬらむ、と思しやりて」(帝におかれては、どれほどわたくしを探しておいでだろう、使者がどこへ尋ねていることかとご心配になって)/04138」とあった。
立ちながらこなたに入りたまへ 04106
死穢に触れた者を見舞う客は、穢れを恐れ着座せず御簾の外で挨拶する慣わしがあった。「こなたに」は、 簀子から廂の間に招じ入れたのであろう。しかし、母屋の中とは御簾で仕切られる。
御簾の内ながらのたまふ 04106
以下の話しが御簾越しであったとのこと。