右近大夫のけはひ聞 夕顔08章02
原文 読み 意味
右近 大夫のけはひ聞くに 初めよりのこと うち思ひ出でられて泣くを 君もえ堪へたまはで 我一人さかしがり抱き持たまへりけるに この人に息をのべたまひてぞ 悲しきことも思されける とばかり いといたく えもとどめず泣きたまふ
04099/難易度:☆☆☆
うこん たいふ/の/けはひ/きく/に はじめ/より/の/こと うち-おもひいで/られ/て/なく/を きみ/も/え/たへ/たまは/で われ/ひとり/さかしがり/いだき/も/たまへ/り/ける/に この/ひと/に/いき/を/のべ/たまひ/て/ぞ かなしき/こと/も/おぼさ/れ/ける と/ばかり いと/いたく え/も/とどめ/ず/なき/たまふ
右近は、惟光大夫がそばに来た気配を感じ取り、惟光のたばかりにより君が主人のもとへ通うこととなったなれ初めからの出来事をつい思い出し泣くと、君もこらえることがおできにならず、自分ひとりは気を張り女を抱きかかえておられたのに、惟光を見てお気が緩んだとみえ、悲しいという感情まで御胸にこみ上げ、しばらくの間、とても激しく止めどもなくお泣きになる。
右近 大夫のけはひ聞くに 初めよりのこと うち思ひ出でられて泣くを 君もえ堪へたまはで 我一人さかしがり抱き持たまへりけるに この人に息をのべたまひてぞ 悲しきことも思されける とばかり いといたく えもとどめず泣きたまふ
大構造と係り受け
古語探訪
大夫 04099
惟光のこと。
初めよりのこと 04099
惟光の手管により光が夕顔のもとに通い染めた当初からの出来事。
え堪へたまはで 04099
「泣きたまふ」にかかる。
我一人さかしがり 04099
先に「我ひとりさかしき人にて」とあった。気をひきしめしっかりしていること。
この人に息をのべたまひて 04099
信頼できる惟光に逢いほっとして。
悲しきこと 04099
夕顔の死による悲しみの感情。
とばかり 04099
上を受けない場合は、しばらくの間の意味。