火はほのかにまたた 夕顔07章19
目次
原文 読み 意味
火はほのかにまたたきて 母屋の際に立てたる屏風の上 ここかしこの隈々しくおぼえたまふに 物の足音 ひしひしと踏み鳴らしつつ 後ろより寄り来る心地す
04095/難易度:☆☆☆
ひ/は/ほのか/に/またたき/て もや/の/きは/に/たて/たる/びやうぶ/の/かみ ここ/かしこ/の/くまぐましく/おぼエ/たまふ/に もの/の/あしおと ひしひし/と/ふみ/ならし/つつ うしろ/より/より/くる/ここち/す
灯りはあるもののちらつき、母屋との境に立てた屏風の上方は、どこもかしこも闇のように奥まってお感じになるうえに、物の怪がめしめしと足を踏みしめながら背後より寄りくる気配がする。
火はほのかにまたたきて 母屋の際に立てたる屏風の上 ここかしこの隈々しくおぼえたまふに 物の足音 ひしひしと踏み鳴らしつつ 後ろより寄り来る心地す
大構造と係り受け
古語探訪
母屋の際 04095
母屋と廂との間。 「奥の方は暗うものむつかしと女は思ひたれば端の簾を上げて添ひ臥しためへり」とあった通り、光たちは廂の間で寝ていたのである。
隈々しく 04095
「くま」すなわち、へこみがあたり中にあいた感じ。闇が口をあけているというイメージであろう。
物の足音ひしひしと踏み鳴らしつつ後ろより寄り来る 04095
足音がひしひしとあるからには、物の怪は庭から来るのではなく、渡殿を渡ってくるのであろう。とすれば、光は西の対か東の対を光は背にしていることになる。西の対には従者たちが休んでいるのだから、物の怪はそちらからは来ない。また、渡殿を背にして母屋の方を見ているとなれば、結局、母屋の東側の廂の間に、背を東にしていることが知られる。