懸想人のいとものげ 夕顔04章09
原文 読み 意味
懸想人のいとものげなき足もとを 見つけられてはべらむ時 からくもあるべきかな とわぶれど 人に知らせたまはぬままに かの夕顔のしるべせし随身ばかり さては 顔むげに知るまじき童一人ばかりぞ 率ておはしける もし思ひよる気色もや とて 隣に中宿をだにしたまはず
04048/難易度:☆☆☆
けさうびと/の/いと/ものげなき/あしもと/を みつけ/られ/て/はべら/む/とき からく/も/ある/べき/かな と/わぶれ/ど ひと/に/しらせ/たまは/ぬ/まま/に かの/ゆふがほ/の/しるべ/せ/し/ずいじん/ばかり さては かほ/むげ/に/しる/まじき/わらは ひとり/ばかり/ぞ ゐ/て/おはし/ける もし/おもひ/よる/けしき/も/や とて となり/に/なかやどり/を/だに/し/たまは/ず
「恋人のもとへ通おうという男が、お話にもならないぶざまな徒歩姿を見られましたら、つらいことでしょうね」などと訴えるが、人にお知らせにならないまま、あの夕顔の花を取り次いだ随人ばかり、あとは顔をまったく知られそうにない童を一人だけ連れてお通いになった。もしや勘づかれでもしまいかと、隣にお泊りになることもなされない。
懸想人のいとものげなき足もとを 見つけられてはべらむ時 からくもあるべきかな とわぶれど 人に知らせたまはぬままに かの夕顔のしるべせし随身ばかり さては 顔むげに知るまじき童一人ばかりぞ 率ておはしける もし思ひよる気色もや とて 隣に中宿をだにしたまはず
大構造と係り受け
古語探訪
懸想人 04048
惟光が自分自身を一般化して述べている。恋人の女房に身分の低い人の従者であると見られるのが心苦しいのである。「懸想人の」は「見つけられてはべらん」にかかる。
かの夕顔のしるべせし随人 04048
光の命で夕顔の花を折り取りに行ったところ、童女から夕霧の歌と扇を受け取り、光へ取り次いだ随人。
むげに 04048
打ち消しを伴い、まったく(~ない)の意味になる。
隣 04048
惟光の母の家。