秋にもなりぬ人やり 夕顔03章01
原文 読み 意味
秋にもなりぬ 人やりならず 心づくしに思し乱るることどもありて 大殿には 絶え間置きつつ 恨めしくのみ思ひ聞こえたまへり
04031/難易度:☆☆☆
あき/に/も/なり/ぬ ひとやり/なら/ず こころづくし/に/おぼし/みだるる/こと-ども/あり/て おほとの/に/は たエま/おき/つつ うらめしく/のみ/おもひ/きこエ/たまへ/り
いつか秋ともなっていた。藤壺へ心の限りを尽くし、自ら求めるように思い悩む出来事などがあって、左大臣家には途絶えがちのまま、ただどうにもならない状況を恨めしくのみ思い申し上げておられた。
秋にもなりぬ 人やりならず 心づくしに思し乱るることどもありて 大殿には 絶え間置きつつ 恨めしくのみ思ひ聞こえたまへり
大構造と係り受け
古語探訪
秋 04031
哀しみの季節である。
人やりならず 04031
人のせいでなく、自らすすんで。
心づくし 04031
心の限りを尽くすこと。「木の間よりもりくる月の影見れば心づくしの秋は来にけり(木の間から洩れてくる月の光を見ると、また心をすりへらす秋が来たんだなとわかる)」(古今・秋・読人しらず)を下にひく。藤壺への成就しない恋をさす。詳細は、『若紫』の帖に譲るが、ここで光は藤壺を犯そうとして失敗したと思われる。