惟光にこの西なる家 夕顔01章10

2021-04-08

原文 読み 意味

惟光に この西なる家は何人の住むぞ 問ひ聞きたりや とのたまへば 例のうるさき御心とは思へども えさは申さで この五 六日ここにはべれど 病者のことを思うたまへ扱ひはべるほどに 隣のことはえ聞きはべらず など はしたなやかに聞こゆれば 憎しとこそ思ひたれな されど この扇の 尋ぬべきゆゑありて見ゆるを なほ このわたりの心知れらむ者を召して問へ とのたまへば 入りて この宿守なる男を呼びて問ひ聞く

04010/難易度:☆☆☆

これみつ/に この/にし/なる/いへ/は/なにびと/の/すむ/ぞ とひ/きき/たり/や と/のたまへ/ば れい/の/うるさき/みこころ/と/は/おもへ/ども え/さは/まうさ/で この/ご ろく/にち/ここ/に/はべれ/ど ばうざ/の/こと/を/おもう/たまへ/あつかひ/はべる/ほど/に となり/の/こと/は/え/きき/はべら/ず など はしたなやか/に/きこゆれ/ば にくし/と/こそ/おもひ/たれ/な されど この/あふぎ/の たづぬ/べき/ゆゑ/あり/て/みゆる/を なほ この/わたり/の/こころ/しれ/ら/む/もの/を/めし/て/とへ と/のたまへ/ば いり/て この/やどもり/なる/をのこ/を/よび/て とひ/きく

惟光に、「この西にある家にはどんな人が住んでいるのか、聞いたことがあるか」とおっしゃると、いつもの面倒な浮気心とは思えども、そんなふうには申し上げないで、「この五六日ここにいますが、病人のことを案じてかかりきりでいますから、隣のことは聞いておりません」などと、聞く側のばつの悪さなど気にもせずずけずけ申し上げるので、「気に入らぬようだな。でもね、この扇は尋ねなければならない理由があるように見えるのだから。気持ちはわかるが、それでもこのあたりの事情をよく知っている人を呼んで聞いとくれ」とおっしゃるので、奥に入って、この家の留守番の男を呼んで質問する。

惟光に この西なる家は何人の住むぞ 問ひ聞きたりや とのたまへば 例のうるさき御心とは思へども えさは申さで この五 六日ここにはべれど 病者のことを思うたまへ扱ひはべるほどに 隣のことはえ聞きはべらず など はしたなやかに聞こゆれば 憎しとこそ思ひたれな されど この扇の 尋ぬべきゆゑありて見ゆるを なほ このわたりの心知れらむ者を召して問へ とのたまへば 入りて この宿守なる男を呼びて問ひ聞く

大構造と係り受け

古語探訪

例のうるさき御心 04010

いつもの浮気の虫。

はしたなやかに 04010

聞く方がきまりわるくような言い方。

心知れらむ 04010

「心」はものの本質。事情に通じている人のこと。

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