御車入るべき門は鎖 夕顔01章02

2021-03-31

原文 読み 意味

御車入るべき門は鎖したりければ 人して惟光召させて 待たせたまひけるほど むつかしげなる大路のさまを見わたしたまへるに この家のかたはらに 桧垣といふもの新しうして 上は半蔀四五間ばかり上げわたして 簾などもいと白う涼しげなるに をかしき額つきの透影 あまた見えて覗く 立ちさまよふらむ下つ方思ひやるに あながちに丈高き心地ぞする いかなる者の集へるならむと やうかはりて思さる

04002/難易度:☆☆☆

みくるま/いる/べき/かど/は/さし/たり/けれ/ば ひと/して/これみつ/めさ/せ/て また/せ/たまひ/ける/ほど むつかしげ/なる/おほぢ/の/さま/を/みわたし/たまへ/る/に この/いへ/の/かたはら/に ひがき/と/いふ/もの/あたらしう/し/て かみ/は/はじとみ/し ご/けむ/ばかり/あげわたし/て すだれ/など/も/いと/しろう/すずしげ/なる/に をかしき/ひたひつき/の/すきかげ あまた/みエ/て/のぞく たちさまよふ/らむ/しもつかた/おもいやる/に あながち/に/たけ/たかき/ここち/ぞ/する いかなる/もの/の/つどへ/る/なら/む/と やう/かはり/て/おぼさ/る

お車を入れる門は錠が鎖してあったので、供の者に命じ家の中から惟光を呼び出そうとお待ちになる間、気味の悪い感じの大路の様子を見渡していらっしゃると、この家のかたわらに、桧垣というものを新しくし直し、上の方は半蔀(ハジトミ)を四五間分ぐらい上に開けひろげ、簾なんかもたいそう白く涼しげな感じがするところへ、額際の美しい人影がたくさん見えて、こちらをのぞいている。あちらこちらへ立ち歩くらしい下半身を想像するに、むやみと背が高い気持ちがする。どのような女たちが集まっているのだろうかと、見なれないものだなと興味をお持ちになる。

御車入るべき門は鎖したりければ 人して惟光召させて 待たせたまひけるほど むつかしげなる大路のさまを見わたしたまへるに この家のかたはらに 桧垣といふもの新しうして 上は半蔀四五間ばかり上げわたして 簾などもいと白う涼しげなるに をかしき額つきの透影 あまた見えて覗く 立ちさまよふらむ下つ方思ひやるに あながちに丈高き心地ぞする いかなる者の集へるならむと やうかはりて思さる

大構造と係り受け

古語探訪

惟光 04002

大弐の乳母の息子で、光の腹心の従者。母の見舞い、ないしは間近な死に備えて、近親者が集まってきている。なお、惟光は「ひかるをおもふ」と訓読でき、光の腹心であることが名からも知られる。

むつかしげなる 04002

人気がなく気味が悪い感じのする。

桧垣 04002

粗末な垣。

新しうして 04002

おそらく、ここに越してきてそう間がないことが知れる。

半蔀 04002

格子の一つで、裏に板を張って中が見えないようにしたもの。この場合は半蔀を上げているが、簾により中が見えないようにしている。

簾などもいと白う 04002

以後、白のイメージが夕顔には付随する。

透影 04002

簾越しに見える影。 現代的な感覚では推し量りがたいが、影を通して相手の情報を得ていたと思われ、しばしば、透影の描写が行われる。

あながちに丈高き 04002

床が高いか、灯りが低いのである。

やうかはりて 04002

見なれないものに好奇心をもつこと。

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