からうして惟光朝臣 夕顔08章01
原文 読み 意味
からうして 惟光朝臣参れり 夜中 暁といはず 御心に従へる者の 今宵しもさぶらはで 召しにさへおこたりつるを 憎しと思すものから 召し入れて のたまひ出でむことのあへなきに ふとも物言はれたまはず
04098/難易度:☆☆☆
からうして これみつ-の-あそむ/まゐれ/り よなか あかつき/と/いは/ず みこころ/に/したがへ/る/もの/の こよひ/しも/さぶらは/で めし/に/さへ/おこたり/つる/を にくし/と/おぼす/ものから めし/いれ/て のたまひ/いで/む/こと/の/あへなき/に ふと/も/もの/いは/れ/たまは/ず
ようやくにして、惟光朝臣が参った。真夜中だろうが、早朝だろうが、御意におつかえしている者であるのに、今宵に限りお供しないばかりか、お召しにまで間に合わなかったのを、けしからぬとお思いながら、そばに召し入れになったが、説明をなさろうにも取り返しのならぬ顛末にがっくりとなされ、とっさにはしっかりとお話なさることもおできでない。
からうして 惟光朝臣参れり 夜中 暁といはず 御心に従へる者の 今宵しもさぶらはで 召しにさへおこたりつるを 憎しと思すものから 召し入れて のたまひ出でむことのあへなきに ふとも物言はれたまはず
大構造と係り受け
古語探訪
といはず 04098
…をものともせず
おこたりつる 04098
光が来てほしいと思う時間に間に合わなかったこと。夜の闇が恐ろしかったのだから、夜が明けるまえに来てほしかったのだろう。
ものから 04098
逆接。
のたまひ出でむことのあへなき 04098
「あへなし」は死・失踪・出家など取り返しのつかなさい事態に際しての無力感。「こと」はやはり形式名詞(話をすること)ではなく、話しの内容、すなわち、夕顔を死なせてしまった事態をいう。
ふとも 04098
「ふと」が下に打ち消しを伴うときの表現。急には(~できない)。
物言はれたまはず 04098
「もの」何かではない。「もの言はず」と否定で使用し、分別ある話ができないの意味。