召せば御答へして起 夕顔07章07
原文 読み 意味
召せば 御答へして起きたれば 紙燭さして参れ 随身も 弦打して 絶えず声づくれ と仰せよ 人離れたる所に 心とけて寝ぬるものか 惟光朝臣の来たりつらむは と 問はせたまへば さぶらひつれど 仰せ言もなし 暁に御迎へに参るべきよし申してなむ まかではべりぬる と聞こゆ
04083/難易度:☆☆☆
めせ/ば おほむ-こたへ/し/て/おき/たれ/ば しそく/さし/て/まゐれ ずいじん/も つるうち/し/て たエ/ず/こわづくれ/と/おほせ/よ ひと/はなれ/たる/ところ/に こころとけ/て/いぬる/ものか これみつ-の-あそむ/の/き/たり/つ/らむ/は/と とは/せ/たまへ/ば さぶらひ/つれ/ど おほせごと/も/なし あかつき/に/おほむ-むかへ/に/まゐる/べき/よし/まうし/て/なむ まかで/はべり/ぬる と/きこゆ
呼び出しになると、返事をして起きたので、「紙燭をつけて持って来い、随身も弓を鳴らし声を立てつづけよと命じよ。人里から遠い場所で、警戒もせずよくも寝てられるものだ。惟光朝臣が来ているようだが」とお問いになると、「側勤めにまいったが仰せ言もない、明るくなる頃お迎えに参るのがよかろうという旨申して、下がってしまいました」とお答えする。
召せば 御答へして起きたれば 紙燭さして参れ 随身も 弦打して 絶えず声づくれ と仰せよ 人離れたる所に 心とけて寝ぬるものか 惟光朝臣の来たりつらむは と 問はせたまへば さぶらひつれど 仰せ言もなし 暁に御迎へに参るべきよし申してなむ まかではべりぬる と聞こゆ
大構造と係り受け
古語探訪
弦打 04083
魔除けのために弓の弦をカラ弾きして音を立てること。
声づくれ 04083
声は警戒音。
人離れたる所 04083
この院のように町中から外れた人のいない場所のことであろう。この寝ている場所のみを指すのではない。この院全体に対する発言。
心とけて 04083
警戒しない様子。
来たりつらむは 04083
来ているのはどうなったの意味。この場合のような名詞(ここでは省略されているので「こと」を補う)の前にきた「ん」は婉曲(ここは仮定ではない)。
さぶらひつれど仰せ言もなし暁に御迎へに参るべき 04083
惟光の発言をそのまま引用した直接話法で、「べし」を「べき」に変えて間接表現にしたもの、いわゆる描出話法(直接話法と間接話法をまぜたもので、中間話法ともいう)である。