人え聞きつけで参ら 夕顔07章04
原文 読み 意味
人え聞きつけで参らぬに この女君 いみじくわななきまどひて いかさまにせむと思へり 汗もしとどになりて 我かの気色なり 物怖ぢをなむわりなくせさせたまふ本性にて いかに思さるるにか と 右近も聞こゆ
04080/難易度:☆☆☆
ひと/え/ききつけ/で/まゐら/ぬ/に この/をむなぎみ いみじく/わななき/まどひ/て いかさま/に/せ/む/と/おもへ/り あせ/も/しとど/に/なり/て われか/の/けしき/なり もの-おぢ/を/なむ/わりなく/せ/させ/たまふ/ほんじやう/にて いかに/おぼさ/るる/に/か/と うこん/も/きこゆ
誰も聞きつけて参る者がないというのに、この女君は異常に震え取り乱し、どうにもならないと思った。汗もしとどにかき、意識のない様子である。「何にでもひどいびくつきようをもうどうにもならぬほどされるご性分ですから、どんなに怖がっておいでか」と右近も申し上げる。
人え聞きつけで参らぬに この女君 いみじくわななきまどひて いかさまにせむと思へり 汗もしとどになりて 我かの気色なり 物怖ぢをなむわりなくせさせたまふ本性にて いかに思さるるにか と 右近も聞こゆ
大構造と係り受け
古語探訪
いかさまにせむ 04080
どうしようか、どうにもならないという諦めの気持ち。
我か 04080
我か人かわからないという精神が分離した状態。正気を失うと訳されているが、本来は精神が身体から抜け出す状態を指した語ではないかと思う。ただし、ここではその原義は残っていない。気絶しているのであろう。我も人もなく、正体をなくしているのだ。
わりなし 04080
状況を打破するすべがない様子。