南殿の鬼のなにがし 夕顔07章15
目次
原文 読み 意味
南殿の鬼の なにがしの大臣脅やかしけるたとひを思し出でて 心強く さりとも いたづらになり果てたまはじ 夜の声はおどろおどろし あなかま と諌めたまひて いとあわたたしきに あきれたる心地したまふ
04091/難易度:☆☆☆
なでん/の/おに/の なにがし/の/おとど/おびやかし/ける/たとひ/を/おぼし/いで/て こころづよく さりとも いたづら/に/なり/はて/たまは/じ よる/の/こゑ/は/おどろおどろし あなかま と/いさめ/たまひ/て いと/あわたたしき/に あきれ/たる/ここち/し/たまふ
南殿で鬼がなにがし大臣を脅かした例を思い出され、心強く、「それでもおしまいになってしまわれはしまい。夜中の声は気味悪くてならない。静かにせよ」とお諌めになり、切羽詰った状況に茫然たる気持ちでいらっしゃる。
南殿の鬼の なにがしの大臣脅やかしけるたとひを思し出でて 心強く さりとも いたづらになり果てたまはじ 夜の声はおどろおどろし あなかま と諌めたまひて いとあわたたしきに あきれたる心地したまふ
大構造と係り受け
古語探訪
南殿の鬼のなにがしの大臣脅やかしけるたとひを思し出でて 04091
太政大臣忠平が紫宸殿で鬼に襲われたときに、勇気を出して鬼を一喝した例を思い出し、ここで気持ちを萎えさせてはいけないと、右近を叱るようにして自分を鼓舞しているのである。
さりとも 04091
「けはひもの疎くなりゆく」ばかりに夕顔の体は冷え切ってしまっているが、それでもの意味。
いたづらになり果て 04091
死ぬの朧化。
夜の声 04091
右近が泣きじゃくる声。
あきれたる 04091
途方にくれる。