日たくるほどに起き 夕顔06章07
原文 読み 意味
日たくるほどに起きたまひて 格子手づから上げたまふ いといたく荒れて 人目もなくはるばると見渡されて 木立いとうとましくものふりたり け近き草木などは ことに見所なく みな秋の野らにて 池も水草に埋もれたれば いとけうとげになりにける所かな 別納の方にぞ 曹司などして 人住むべかめれど こなたは離れたり
04069/難易度:☆☆☆
ひ/たくる/ほど/に/おき/たまひ/て かうし/てづから/あげ/たまふ いと/いたく/あれ/て ひとめ/も/なく/はるばる/と/みわたさ/れ/て こだち/いと/うとましく/もの-ふり/たり けぢかき/くさき/など/は こと/に/みどころ/なく みな/あき/の/のら/にて いけ/も/みくさ/に/うづもれ/たれ/ば いと/けうとげ/に/なり/に/ける/ところ/かな べちなふ/の/かた/に/ぞ ざうし/など/し/て ひと/すむ/べか/めれ/ど こなた/は/はなれ/たり
日が高くなる頃にお起きになって、格子を手ずからお上げになる。庭はひどく荒果て、人影もなくずっと遠くまで見渡され、木立はじつに気味わるく樹齢を経ている。手近の草木などは特に見る甲斐なく、どこも秋の野らとなり、池も水草に埋もれているので、ずいぶん人を寄せ付けぬ感じのするところかな、別棟の方に部屋を設けて人が住んでいるようだが、こちらは離れている。
日たくるほどに起きたまひて 格子手づから上げたまふ いといたく荒れて 人目もなくはるばると見渡されて 木立いとうとましくものふりたり け近き草木などは ことに見所なく みな秋の野らにて 池も水草に埋もれたれば いとけうとげになりにける所かな 別納の方にぞ 曹司などして 人住むべかめれど こなたは離れたり
大構造と係り受け
古語探訪
秋の野らにて 04069
「里はあれて人はふりにし宿なれや庭もまがきも秋の野らなる」(里は荒れ人は老いさらばえた宿であるな、庭もまがきも秋の野良同然だ)(古今・僧正遍昭)を下に敷く。
別納の方 04069
別棟。