その人とはさらにえ 夕顔04章02
原文 読み 意味
その人とは さらにえ思ひえはべらず 人にいみじく隠れ忍ぶる気色になむ 見えはべるを つれづれなるままに 南の半蔀ある長屋に わたり来つつ 車の音すれば 若き者どもの覗きなどすべかめるに この主とおぼしきも はひわたる時はべかめる 容貌なむ ほのかなれど いとらうたげにはべる
04041/難易度:☆☆☆
その/ひと/と/は さらに/え/おもひ/え/はべら/ず ひと/に/いみじく/かくれ/しのぶる/けしき/に/なむ/みエ/はべる/を つれづれ/なる/まま/に みなみ/の/はじとみ/ある/ながや/に/わたり/き/つつ くるま/の/おと/すれ/ば わかき/もの-ども/の/のぞき/など/す/べか/める/に この/しゆう/と/おぼしき/も はひ/わたる/とき/はべか/める かたち/なむ ほのか/なれ/ど いと/らうたげ/に/はべる
「誰ということはまったく見当がつきません。ひどく人目をいとい隠れ忍んでいる様子に見えますが、無聊にまかせて、南側にある半蔀のついた長屋にやって来ては、車の往来する音がすると、若い女房たちが外を覗き見することになっているようで、この主人とおぼしき女も長屋の方へこっそり渡ってくる時がある模様です。容貌は、ちらりと見たぶんには、たいそうかわいらしゅうございました。
その人とは さらにえ思ひえはべらず 人にいみじく隠れ忍ぶる気色になむ 見えはべるを つれづれなるままに 南の半蔀ある長屋に わたり来つつ 車の音すれば 若き者どもの覗きなどすべかめるに この主とおぼしきも はひわたる時はべかめる 容貌なむ ほのかなれど いとらうたげにはべる
大構造と係り受け
古語探訪
南の半蔀ある長屋 04041
先に「桧垣といふもの新しうして、上は半蔀四五間ばかり上げわたして」とあった。
はひわたる 04041
「這ひ」はそっとする様子。